試練ばかりの旅打ちで、元気をくれた門別競馬場の「おもてなし」 (3ページ目)
しかし、高校生とのやり取りを聞いていたのか、近所のおじさんがやって来て、少し先に行けば、タクシー会社があると教えてくれた。
ホッとした。本当に、このときはホッとした。
あとで聞けば、富川駅と競馬場を結ぶバスが1日1本あるという。札幌から来た送迎バスが、おまけ的な感じで1回だけ往復してくれるそうだ。前に、盛岡競馬場のことを「日本一アクセスが悪い」と書いたが、ここもなかなかのものだ。
競馬場までのタクシー代は1500円ほど。残金を考えれば痛い出費だが、やむを得ない。さすがにもう、坂道を小1時間も歩く元気はない。
とはいえ、今晩のホテル代を差し引けば、もはや残金はないに等しい。いや、ひょっとしたらすでにマイナスになっているかもしれない。少なくとも、このあと競馬で勝負するということは、明日の朝に支払うホテル代に手をつけることになる。
だからといって、ここでめげたり、弱気になったりしてはいられない。頭に浮かぶのは、出発前に担当編集Tが言ったひと言だ。
そう、足りなければ「競馬で儲ければいい」のだ。
門別競馬場は、1997年にそれまで競走馬のトレーニングセンターだったところを改築してできた。以後、日本で競馬場は作られていないから、日本で最新の競馬場となる。ばんえい競馬は今や帯広が唯一の競馬場となってしまったが、北海道公営の地方競馬(ホッカイドウ競馬)も現在はこの門別だけである。
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