【競馬】皐月賞の出走直前、生産者たちの胸中に去来したモノ (2ページ目)
僅差の2番人気となったのは、ワールドエース(父ディープインパクト)。ディープブリランテと同じ父を持つ同馬は、馬名(「世界のエース」という意味)が表すとおり、幼少期から高い期待を背負っていた。そして、その期待に違わぬ活躍をデビュー後も披露。父譲りの追い込みで、4戦3勝の実績を積み上げた。唯一、2着に負けた若駒ステークス(2着。2012年1月21日/京都・芝2000m)も、展開のアヤで逃げ馬を捕まえ切れなかったもの。素質馬が能力の底を見せないまま、GIの舞台に駒を進めてきたのだ。
ディープブリランテは、その2頭に次ぐ3番人気。これまでのレースより距離が200m長くなる皐月賞で、再度かかり癖を見せれば、道中の消耗がさらに増す可能性もあった。その不安からか、同馬はデビュー以来、初めて1番人気を他馬に譲ることになった。
4番人気は、ディープブリランテが2着に敗れた共同通信杯の勝ち馬ゴールドシップ(父ステイゴールド)。こちらも、5戦3勝2着2回という安定感抜群の成績で、一冠目に照準を合わせてきた。
10倍以下のオッズはこの4頭。まさに"4強ムード"が漂う皐月賞だったと言える。
迎えた、決戦当日。伊藤氏は昼頃、中山競馬場に入ったという。そのときの心中をこう振り返った。
「有力馬の中では、『敵はワールドエースかな』なんて考えていました。あちらのほうが、切れ味というか、瞬発力が上だったので。それと、ディープブリランテのかかり癖も大きな懸念材料でした。とはいえ、『それでもきっと勝ってくれる』と前向きに考えていましたね。小回りで先行馬に有利な中山ですし、距離延長とは言っても200mだけですから。何とかしのいでくれるのではないか、と」
さらに、ディープブリランテには追い風が吹いた。「やや重」という馬場コンディションだ。当日の天候は晴れだったが、それまでに降った雨が残っていたため、わずかに水分を含んだ芝状態となったのだ。
「ディープブリランテは、2戦目の東京スポーツ杯2歳S(2011年11月19日/東京・芝1800m)で、大雨の不良馬場を快勝しています。ですから、このコンディションは、プラスにはなってもマイナスにはならないと思いました」(伊藤氏)
2 / 3