2014.04.27

【競馬】皐月賞の出走直前、生産者たちの胸中に去来したモノ

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • JRA●写真

『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第33回


デビューから2連勝を飾ったあと、「クラシック登竜門」と言われる重賞で連敗を喫したディープブリランテ。初の敗戦(2着)を味わった共同通信杯から「引っかかる気性」を露呈した同馬は、その不安を抱えたまま、クラシックの1冠目となる皐月賞に挑んだ。生産者であるパカパカファームのスタッフが、期待と不安の入り混じる中で見守った、そのGI戦を振り返る――。

「混戦」と言われた今年の皐月賞(4月20日/中山・芝2000m)。その激戦を制したのは、5戦4勝のイスラボニータ(牡3歳。父フジキセキ)だった。同馬は、日本競馬をけん引する社台グループの牧場「白老ファーム」の生産馬。初めて経験する右回りも苦にすることなく、見事栄冠を手にした。

 この皐月賞には、パカパカファームの生産馬も名を連ねた。トライアルのスプリングS(3月23日/中山・芝1800m)で3着入線を果たし、出走権を獲得したクラリティシチー(牡3歳。父キングカメハメハ)だ。結果は8着と厳しいものだったが、潜在能力の高さはこれまでのレースで実証済み。今後の成長次第では、大舞台で躍進する日が来ても不思議ではない。

 そのクラリティシチーと同じく、パカパカファーム生産馬として皐月賞に挑戦したディープブリランテ。同馬がその舞台を踏んだのは、今から2年前(2012年4月15日)のこととなる。

 デビューから連勝しながらも、ディープブリランテは3戦目の共同通信杯(2012年2月12日/東京・芝1800m)からかかり癖を見せて連敗した。そして、高い能力への期待と、前向き過ぎる気性への不安が同居する中、晴れの舞台を迎えた。

 このときパカパカファームからは、代表のハリー・スウィーニィ氏を含めた4名のスタッフが、中山競馬場に足を運んでいた。同牧場のフォーリングマネージャー(生産担当)を務める伊藤貴弘氏も、その中のひとりだ。

「皐月賞のときは、社長と僕と、あとふたりのスタッフと観戦に行きました。皐月賞の前日に飛行機で移動して、夜は明日のレースのことをいろいろと考えていましたね。インターネットでニュースを検索したり、さまざまな人のコメントを見たり。僕はホテルの部屋で、ひとりで過ごしていました。社長は確か、『前祝い』と称してどこかで飲んでいたはずです(笑)」

 この年の皐月賞は、ディープブリランテを含めた4頭の有力馬に注目が集まっていた。1番人気は、重賞をすでに2勝していたグランデッツァ(父アグネスタキオン)。4戦4勝で引退した父の「最高傑作」と謳われた存在で、前走のスプリングS(2012年3月18日)では、ディープブリランテを破っていた。