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【競馬】オルフェに敵なし。有馬記念は「ヒモ穴」に妙味あり

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 早いもので、今年もあとわずか。GIレースは、有馬記念(12月22日/中山・芝2500m)を残すのみとなりました。1年の締めくくりとなる同レースは、「ホースマンの夢」である日本ダービーや、「古馬の頂点を決する」天皇賞とはまた違った趣(おもむき)があり、関係者、ファン、多くの人たちが注視しているビッグレースです。

 今年の有馬記念の注目は、なんと言っても、これを最後に引退するオルフェーヴル(牡5歳)です。

 引退レースと言うと、「馬のブランド力を下げないためにも、負けないレースをする」という見方と、「種牡馬や繁殖牝馬として無事に送り出すためにも、無理な競馬はさせない」という見方があります。

 前者の見方の象徴と言えるのは、例えば過去の有馬記念では、2003年に勝ったシンボリクリスエス。「オレの存在を忘れるな!」と言わんばかりに、2着に9馬身の差をつけて圧勝。ファンの胸に、名馬としての印象を強く刻んでターフを去りました。先日、香港スプリント(12月8日/香港・芝1200m)で連覇を飾ったロードカナロアも同様です。5馬身差で完勝し、最後にもうワンランク"格"を上げて有終の美を飾りました。

 逆に、一昨年の有馬記念で7着に敗れたブエナビスタや、2005年の有馬記念で8着に敗れたゼンノロブロイなどは、後者の見方のような思惑があったかもしれません。もちろん2頭とも、すでに余力はなかったのもかもしれませんが、それまでの戦績からすると、それぞれ負け過ぎの感がありましたからね。

 では、オルフェーヴルの場合はどうか。

 三冠馬(皐月賞、ダービー、菊花賞)であり、GIは他に有馬記念と宝塚記念を制しています。さらに世界最高峰のレースであるフランスの凱旋門賞で2年連続の2着。その実績からして、もしここで負けても種牡馬の価値が下がることはないでしょうが、負けないレースをして、しっかりと結果を出してくると思います。

 というのも、まずは持っている能力そのものが、他の馬とは違うからです。昨春の天皇賞・春(2012年4月29日/京都・芝3200m)こそ11着と大敗しましたが、今年のフランスではさらにパワーアップした姿を見せてくれました。前哨戦のフォワ賞(9月15日)で圧勝し、2年連続で凱旋門賞(10月6日)2着という結果を残しました。これまでの日本のサラブレッドの常識を覆(くつがえ)す"怪物"の走りだったと思います。

 また、鞍上の池添謙一騎手にかかる重圧を不安視する声もありますが、それも心配はいらないと思います。おそらく、彼がオルフェーヴルに騎乗して、最もプレッシャーがかかっていたのは、三冠がかかった菊花賞(2011年10月23日/京都・芝3000m)だったのではないでしょうか。そして、次がダービー(2011年5月29日/東京・芝2400m)。負けなしの馬であったり、凱旋門賞を勝っていたりするのならまだしも、大敗も経験していますし、今回は菊花賞やダービーほどのプレッシャーはないでしょう。いつもどおりの騎乗ができると思います。

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著者プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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