2013.12.16

【競馬】有馬記念で思い出す「衝撃の名馬」マツリダゴッホ

  • 村本浩平●文 text by Muramoto Kohei
  • photo by Hideharu Suga

 その年の中央競馬(JRA)におけるスターホースが一同に介す有馬記念は、「ドリームレース」とも称される。出走馬は、牡馬、牝馬を問わず、フレッシュな3歳馬からベテランの古馬まで多種多様なメンバーがそろい、中山競馬場の芝2500mを舞台にして競い合う。

 スプリント(短距離)、マイル(1600m)、クラシックディスタンス(2400m前後の中距離)など、カテゴリーごとの細分化が進んだ近年の競馬ではありえなくなったが、以前はマイル戦を中心に戦ってきた馬の出走も珍しくはなかった。「奇跡のラストラン」をこの有馬記念(1990年)で見せたあのオグリキャップも、有馬記念を2勝した以外は、安田記念(東京・芝1600m)、マイルCS(京都・芝1600m)とGI勝ちはマイル戦のみ。本質的にはマイラーだった。

2007年の有馬記念で9番人気ながら見事な勝利を飾ったマツリダゴッホ。「ドリームレース」はまた、ときに高配当をもたらす、ファンにとっても”夢のレース”でもある。2008年には、3連単の配当が98万5580円を記録。100円が約100万円というボーナスのような配当に、「来年こそは高額配当を!」と心に誓ったファンも多かったはずだ。

 さらに、あッと驚く走りで「ドリームレース」を演出する馬たちもいる。代表的な存在は、1991年のダイユウサク。14番人気で優勝し、単勝の配当は過去最高額となる1万3790円だった。それに続くのが、2007年に9番人気で勝ったマツリダゴッホ。単勝は、5230円の高配当となった。

 彼らは「ドリームレース」の象徴として、有馬記念を勝った歴代の名馬以上に、今でも多くの人に語り継がれている。

 単勝万馬券を記録したダイユウサクは、それまでにGIレースで勝ち負けしたこともなく、有馬記念には前走でマイルのオープン戦を勝利しての挑戦だった。ドリームレースのメンバーとしては明らかに格落ちの存在だったことが、高額配当につながった。

 しかし不思議なのは、マツリダゴッホである。彼は、その年に重賞を2勝していた。しかも父はディープインパクトをはじめ、幾多の名馬を送り出してきたサンデーサイレンスである。近親には、菊花賞を制したナリタトップロードの名前もあるように、血統面からも「穴馬」と言えるような存在ではなかった。

 では、なぜマツリダゴッホは15頭の出走馬の中で、単勝9番人気の評価に止まったのか? それは2007年の有馬記念が、ウオッカ、ダイワスカーレット、メイショウサムソンなど、国内外6頭のGI勝ち馬がそろった、まさに真の「ドリームレース」だったからだろう。華々しい活躍を見せる名馬たちの影に、完全に埋もれてしまったのだ。