渋野日向子は「根っからの勝負師」。村口史子が振り返る「奇跡の瞬間」 (3ページ目)

  • 柳川悠二●構成 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Kyodo News

 プレーに集中し、気負いもなく臨んだ初日は2位タイ発進。風もなく、天気も安定していて、飛ばし屋の渋野さんにはとっても回りやすいコンディションだったと思います。

 2日目も単独2位でフィニッシュ。さすがの渋野さんも、3日目にはこれまでとは違った緊張に包まれるだろうな、と思っていました。「ムービング・サタデー」と言われるように、決勝ラウンドに入れば、各選手がスコアを意識しますし、実際にスコアがよく動きます。そうした状況にあって、普通なら「(スコアを)伸ばさなきゃいけない」とか「ミスできない」といった雑念が、頭の片隅に入ってくるものですから。

 しかし、彼女の様子は2日目までと、何ら変わりませんでした。ミスして、ボギーを叩いたとしても、次のホールでは"ピンに当ててやる!"くらいの強気で、アグレッシブに攻めていました。それで、普通はバックナインではあまりスコアは伸びないのですが、渋野さんの場合は、むしろバックナインのほうがバーディーが多く、バックナインでスコアを伸ばしていました。

 こうした性格は、ゴルファーとして培ってきたものではなく、(学生時代にやっていた)ソフトボールの経験が生きているのかもしれません。根っからの"勝負師"なのでしょう。

 2位と2打差の単独首位に立って迎えた最終日は、3番(パー4)で4パットを喫してダブルボギー。優勝を争っている選手にとって、ダブルボギーは致命傷になりかねません。このまま下位に沈むことが脳裏をよぎりましたが、この時も彼女はその後、積極的にピンを狙っていったんです。

 過去の大会でも、そういう選手が頂点に立っていました。メジャーで勝つには、そうでなければいけないと強く印象に残っていたので、渋野さんが同様の姿勢でプレーしているのを見て、これまで(日本人選手)とは何かが違う、という雰囲気を感じたのは確かです。現に、渋野さんは5番(パー4)、7番(パー5)とバーディーを奪って、ミスを帳消しに。

 渋野さんも、ミスした時は自らへの怒りをあらわにします。ところが、すぐに気持ちを切り替えて、次のショットに(冷静に)向かうことができる。これって、なかなかできることではありません。

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