懐疑的だった無名コーチの登用。それでもタイガー・ウッズは復活した (3ページ目)

  • 吉田洋一郎●文 text by Yoshida Hiroichiro
  • photo by Getty Images

 欧米には優れたコーチがたくさんおり、スイングだけでなく、ショートゲームやパッティングなど、分業制も進んでいる。また、コーチにもさまざまな種類があって、ひとつのメソッドを教えるタイプもいれば、選手に対して柔軟に対応し、さまざまなスイングモデルを提案するタイプもいる。

 つまり、選手が何をしたいのかによって、適切なコーチの人選は変わる。選手としては、たくさんの選択肢の中から、選手自身がコーチから何を教わる必要があるのか、それを明確にしてスタートを切らなければ、適切なコーチを選ぶことができないし、まして理想のゴールにはたどり着くことができない、ということだ。

 ウッズの話に戻そう。

 ウッズは、2014年にクリス・コモという、ほぼ無名のコーチと契約した。『ゴルフスイングコンサルタント』と名乗る彼は、全米中の有名なコーチたちに弟子入りしていて、さらに、テキサス女子大学のヤン・フー・クォン教授から学んだバイオメカニクス(生体力学)をゴルフのスイングに取り入れていた。

 無論、一部のプロゴルファーやメディアは、コモに懐疑的な目を向けていた。その論調の大半は以下のようなものだった。

 現在は落ちぶれているとはいえ、かつては世界のトップに君臨していたウッズである。その指導を、何の実績もなく、バイオメカニクスという訳のわからない話をする"若造"に任せていいのか、というものだ。

 だが、ウッズには「自分自身の持っている特性を生かした、体に負担をかけないスイングを確立したい」という明確なビジョンがあった。そのために必要なのが、コモであり、バイオメカニクスの知識だった。

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