マスターズへの情念が強すぎた松山英樹。内なる魔物を制御できるか (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●取材・文 text by Mitamura Shoho
  • photo by AP/AFLO

 今回の11位タイというのは、"日本人選手"という立場であれば、確かに「よくがんばった」と賛辞されるけれど、松山の場合は世界ランキング4位。さらに、メジャー制覇に最も近い選手のひとりとして、全米のメディアからも注目されていたのである。

 ゆえに、当然松山も「悔しい」わけである。

「いや、今までのマスターズでも悔しかったことはたくさんあるので、(今年が)特別ということではないです」とつけ加えたが、僕は相当悔しかったはず、と思っている。

 結局のところ、今回の松山はピークが一度下がって、そこから修正していく昇りカーブの途中だったかもしれない。一抹の不安を抱えていたことも確かだろう。けれどもそれ以前に、松山の、マスターズ優勝に対する期待感や、熱い思いが強すぎたのだと思う。自分のトータル的なコンディションと、そのバランスが悪かったのだ。

 松山に欠けていたのは、"程よい緊張感"がなかったことだと思う。

 程よい緊張感を保ちながら、どこか精神的にも余裕を持ち、しかも戦闘モードで......と、よく言えば"中庸"。ちょうど弓の弦の張り具合と同じで、張りすぎても、緩みすぎてもいけない。それを言い換えると、なんとも矛盾した心情になるわけだが、松山の心情は一方に偏りすぎていた。

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