悲運のマスターズから半月あまり。「傷心」のスピースは今...... (3ページ目)

  • 武川玲子●文 text by Reiko Takekawa
  • photo by rickiefowler/Instagram

 ともあれ、悲劇的な敗北を味わったスピースには、世界中からたくさんのエールが送られてきている。メジャー最多優勝を誇るジャック・ニクラウス(76歳/アメリカ)もそのひとりだ。

「いろいろな意味で、彼が今回負けたことは、のちに大きく生きてくることだろう。もし22歳のスピースがマスターズで2勝目を挙げてしまったら、彼がこれから目指すものがなくなってしまっていたかもしれない」

 ニクラウス自身、まだ20歳でアマチュアだった頃、1960年の全米オープンで勝つチャンスがあった。しかし、結果は勝てなかった。それが「よかった」と彼は言う。

「あのとき負けたから、その後、(自分は)もっとうまくなるために努力を続けてこられた。長い目で見れば、スピースのこの負けは、彼をもっと強くする」

 ニクラウスはメジャーで18勝を挙げているが、実はその裏で2位に甘んじたことが19回もある。そんな彼の言葉は重い。

 スピースもまた、これから勝利を重ねると同時に、負けることも増えていくのだ。今年のマスターズは敗れたものの、それが今後の糧になることは間違いない。

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