【ゴルフ】藤田光里が語る優勝秘話「私を変えた83の大たたき」 (2ページ目)

  • 金明昱●文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Sueishi Naoyoshi,Getty Images

「2日目を終えて2位タイと、上位争いを演じていたのに、3日目に『83』をたたいて(優勝争いから)一気に脱落してしまった。それで、最終日は目標のない戦いになってしまったことがすごく悔しかった。あのとき、本当に『勝ちたい』という気持ちのスイッチが入りました」

 以来、不甲斐ない成績に終わった自身への戒めの意味もあって、藤田はそれまで以上に結果にこだわるようになったという。そうして、続くスタジオアリス女子オープン(4月10日~12日/兵庫県)で2位、KKT杯バンテリンレディス(4月17日~19日/熊本県)で4位タイと結果を残し、フジサンケイレディスでついに栄冠を手にした。

 最終18番ホールでは、藤田がバーディーパットを入れれば優勝、外せば6人によるプレーオフが濃厚だった。プレッシャーのかかる状況の中、藤田がエッジから打ったボールは、フックラインを描いて、5m先のカップに見事に吸い込まれた。

「最後(のパット)は、プレーオフでいい、と思って打った球でした。まさか入るとは思っていなかったんで、その瞬間は自分でも信じられず、本当に驚きましたよ」

 ツアー初優勝は誰にとってもうれしいものだが、藤田にとってその喜びは、人一倍大きかったのではないだろうか。昨季、周囲から「大物ルーキー」として注目される中、ゴルファーとしての"どん底"を味わってきたからだ。

 ツアー本格参戦1年目となった昨季、藤田は前半戦こそ、優勝争いにも何度か絡んで評判どおりの活躍を見せた。だが8月、本人が語るには、地元・北海道で開催されたmeijiカップ(32位タイ。8月8日~10日/北海道)あたりから、歯車が狂い始めたという。実際、meijiカップ以降の13試合中、8試合で予選落ちを喫した。ドライバーがイップス()気味になって、そこからアイアン、パターまで「打つのが怖くなった」という。
※集中すべき局面で極度に緊張すること。神経に及ぼす心理的症状。ゴルフでは、腕が動かなくなったり、頭で考えていることができなくなったりして、思うようなスイングやパッティングができなくなること。

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