【ゴルフ】苦節10年。前田陽子に光を与えた「師匠の言葉」 (5ページ目)

  • 古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki
  • photo by Getty Images

 プロ初勝利までまさに苦難の連続だったが、前田は自分が“苦労人”と言われることが「恥ずかしい」と言う。

「自慢できるようなものではないですから、そういうことって」

 とはいえ、夢を諦めずにコツコツとやってきて、念願のツアー参戦を果たし、見事な勝利も飾った。そのうえ、「35歳まではバイトをしながらでも、とにかくツアープロを目指そうと思っていました」という前田の、地道に夢を追う姿に共感した伊藤園が、専属契約を交わしてくれた。前田が、多くの人々に夢や感動を与えたことは、紛れもない事実だ。

「私のように苦労してやっている人は、他にもいますから。そればかり注目されるのは、ちょっと……。でも、私のことを見て『諦めずにがんばろう』と思ってくれる人がいたのであれば、(私の優勝も)意味があったのかな、とは思います。これからも、ツアーにずっと出続けられるようにがんばりたい」

 厳しい世界であることを知っているがゆえ、一度の優勝で浮き足立つことはない。今季の抱負を聞かれても、前田が大口を叩くことはなかった。

「昨季は、最後にいい終わり方ができました。その分、今季は私にとって勝負の年だと思っています。私だけでなく、誰もが昨年よりも上を目指そうと思っている中で、まずは早くシード権を確定できるようにしたい。それを目標にやっていきたいと思います」

 10代や20代前半の若手に比べれば、重ねてきた苦労の数が違う。激戦の舞台にあって、前田が再び“大仕事”をやってのけてもおかしくない。

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