「今は勝てなかった」松山英樹が手にした米ツアー優勝の『鍵』 (2ページ目)

  • 武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko
  • photo by Getty Images

 2日目、3日目は「調子はよくない」と口にしていたとおり、ショット、パットともに安定性を欠いた。2日目はティーショットがラフやセミラフにつかまる場面が多く、「ドライバーが悪く、アイアンもいいわけじゃない。(ショットは)真っ直ぐ飛ぶ気がしない」と吐き捨てた。3日目はトータル30パットとなかなかチャンスを決められず、「今日は特にパッティングがうまくいかなかった。それで、あまり(スコアを)伸ばすことができなかった」と不満の表情を見せた。

 とはいえ、2日目が67、3日目も68と、スコアを着実に伸ばして、順位は5位タイ、3位タイと浮上。3日目を終えてトップとはわずか3打差と、十分に優勝を狙える位置につけた。

「内容には満足していませんけど、スコアには満足しています。ショットやパットが悪いなりにも、こういう(上位の)位置にいられて、崩れなかったのはよかった。プレイの出来は日に日に悪くなっているので、(最終日も)コースと向き合って、スコアを崩さないように気をつけていきたい。それで、バーディーを狙えるシチュエーションを迎えたら、バーディーをとっていきたい。今までと変わらないプレイをしていきたいと思います」

 米ツアー初優勝が手に届く位置まできても、松山は冷静だった。最終日に向かう意気込みを問われても、周囲の興奮をよそに淡々と語っていた。

「優勝を意識する? 明日になってみないとわからない。かといって、朝からガツガツ行く、という気持ちはない。残り数ホールになって、いい位置にいれば、ピンを狙っていくショットをすると思う。そんなふうに、優勝を争える位置でプレイをしたいと思っています。そのときは気持ちの作り方が難しくなる? う~ん、そういう気持ちとか気にしたことないし、それが難しいと思ったこともない。優勝争いをしたら苦しい思いをするかもしれないけど、優勝争いをしているときだけが苦しいわけではない。下位でプレイしているときも苦しいですから」

 どんな舞台、どんな状況を迎えても、松山の気持ちはブレない。それが、彼の強さなのだろう。常に目の前の一打に集中して、自らがいい結果を残すことだけを考えて戦っている。迎えた最終日もそうだった。大観衆の声援やブーイングにも動じず、初優勝へのプレッシャーを感じている様子もなかった。普段どおりのプレイで、ショットが乱れたり、パットが入らなかったりしても、ガタガタと崩れることなく、最後まで落ち着いたプレイを見せて優勝争いを演じた。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る