メッシが兄と慕ったアルゼンチンの先輩10番 全盛期のリケルメは「王様」だった
世界に魔法をかけたフットボール・ヒーローズ
【第42回】フアン・ロマン・リケルメ(アルゼンチン)
サッカーシーンには突如として、たったひとつのプレーでファンの心を鷲掴みにする選手が現れる。選ばれし者にしかできない「魔法をかけた」瞬間だ。世界を魅了した古今東西のフットボール・ヒーローたちを、『ワールドサッカーダイジェスト』初代編集長の粕谷秀樹氏が紹介する。
第42回は、1990年代後半から2000年代にかけて輝きを放ったアルゼンチンの「マエストロ」フアン・ロマン・リケルメを紹介する。近代化されたフットボールの世界で、オールドファンが求める「10番」を誰よりも感じさせた。絶滅危惧種だからこそ、みんなに愛された。
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フアン・ロマン・リケルメ/1978年6月24日生まれ、アルゼンチン・ブエノスアイレス州出身 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 近代フットボールは17〜18世紀にヨーロッパで流行した古典主義に近い。理性や秩序、合理的な思考を重視し、選手の個性よりも戦略・戦術が上回る。
古典主義の対極に位置するのがロマン主義だ。個人の感情、想像力を解放し、細かいルールに縛られることを嫌う。近代フットボールではいわゆるガラパゴス化だ。周囲との互換性を失って孤立し、最終的に淘汰される運命にある。
ただし、ロマンが美しい考え方、主義・主張であることに疑いの余地はない。誰だって自由に生きたい。他人に指図されるなんてまっぴらごめんだ。
さて、名前にロマンをいただいた名手がいる。ファン・「ロマン」・リケルメだ。
古典主義というか、自らの戦略・戦術に過剰なまでの自信を持っていたバルセロナのルイ・ファン・ハール監督(当時)とはソリが合わなかった。
2002年夏、ボカ・ジュニアーズからバルセロナに移籍したリケルメにボールが渡るたびに、オランダ人の指揮官は試合中でも練習でも「ワンタッチ」としつこかったという。一瞬のフレア(輝きを放ったプレー)で多くのサポーターに歓声を浴びても、ファン・ハールはまったくといっていいほど評価しなかった。
著者プロフィール

粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。


















