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【欧州サッカー】悪童ガスコインのプレーはいつだって楽しかった 才能を持て余したスーパースターの末路 (4ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【スターの要素をすべて持っていた】

 また、ガスコインはシュートの技術も申し分なかった。手もとの資料映像をチェックしてみると、力任せに打ってはいない。GKのポジションを見極めてインフロントでファーポストを巻く。DFをブラインドに使い、ボール1個分ほどのスペースに沈める。GKとの1対1ではキックフェイント、あるいはループで相手DFを翻弄した。

 また、右利きにもかかわらず、左足で巧妙な一撃を、そしてPKも決めている。こんな芸当、ほかに誰ができるというのだ。

 パワー系のシュートでは、1990−91シーズンFAカップ準決勝のアーセナル戦が記憶に残っている。およそ30メートルのFK。ガスコインの右足から放たれた一撃は、ややアウトにかかりながらゴール上部に突き刺さった。

 コール・パーマー(チェルシー)やジュード・ベリンガム(レアル・マドリード)など、現在のイングランド代表は攻撃的なポジションに優れた選手を揃えている。マックス・ダウマン(アーセナルユース/15歳)、イーサン・ヌワネリ(アーセナル/18歳)、リオ・ングモア(リバプールユース/17歳)といった10代のパフォーマンスにも胸がときめく。

 だが、あの時代のガスコインが放った輝きには及ばない。センス、イマジネーション、特異すぎるキャラクターなど、彼はスーパースターとしての要素をすべて持っていた。しかし同時に、あまりにもぜいたくな才能を持て余していた、とも考えられる。

 悪童でもトラブルメーカーでも構わない。ガスコインのプレーは、いつだって楽しかった。

著者プロフィール

  • 粕谷秀樹

    粕谷秀樹 (かすや・ひでき)

    1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン社)など多数。

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