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【プレミアリーグ】新シーズンの楽しみはチェルシーのククレジャ 世界最高の左サイドバックと思わせるプレー (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【従来型SBも偽SBもできる】

 スペインのアレジャ出身の26歳。エスパニョールからバルセロナのユースに移ったククレジャは、19歳の時にバルセロナのトップチームでデビューしている。ところが、すぐにエイバルに貸し出され、1シーズン後にはヘタフェへ二度目の貸し出し。2021-22シーズンにはプレミアリーグのブライトンへ移籍した。

 172センチと小柄な体格。左足のテクニックとアジリティに優れたいい選手だけれども、特別な何かを持っているわけではなく、バルセロナの左を任せられるほどではないと思われていたようだ。

 移籍したブライトンでは、そのシーズンのファンが選ぶ年間MVPに選出された。このシーズンのブライトンではレアンドロ・トロサール(現アーセナル)、パスカル・グロス(現ドルトムント)などが活躍していたが、ククレジャのチームの潤滑油としての働きが高く評価されている。当時のグレアム・ポッター監督(現ウェストハム監督)の可変システムにおいて偽SB的な役割を果たしていた。

 ブライトンでの活躍が認められ、2022-23シーズンからチェルシーに移籍。移籍当初は守備面でのミスなどもあり批判も受けたが、シーズンを重ねて安定感を増し、現在は不可欠の存在になっている。

 ククレジャの特徴は戦術的な適応力だ。左SBとしての堅実な守備力だけでなく、中盤のつなぎもそつなくこなし、3センターバックの一角としてもプレーできる。特別なフィジカル能力が目立つわけではないが、非常に賢い選手と言える。

 現代サッカーにおいてSBは戦術的なキーマンになっている。攻撃時には内側に絞ってMFになるなどのユーティリティー性が戦術の幅を決めるからだ。興味深いのはチェルシーでより自由度が高いのは右SBのギュストのほうだということ。CWC決勝でも攻撃に出る頻度は右のギュストのほうが高く、左のククレジャはむしろ対面のドゥエやクバラツヘリアをマークしての上下動という従来のSBに近いプレーぶりだった。

 偽SBの流行によって偽SBに特化したSBも増えてきているなか、ククレジャはどちらもこなせる。両サイドが「偽」というケースもあるが、どちらかはバランスを取って守備的にプレーする場合は多く、そのどちらもそつがないククレジャはそれゆえに価値が上がっている。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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