クリスティアン・ヴィエリの全盛期はまさに無双 相手DFを圧倒する問答無用のパワーファイター (4ページ目)
【愛する古巣インテルへの思い】
また、近代フットボールに関しても理解を示している。
「かつては、点が取れてアシストも上手なFWが求められていた。まぁ、今も昔も重要な要素だろう。ただ、現在は技術やゴール前のセンスだけではなく、周囲との連係、高度な戦術理解も兼ね備えていなくてはならない。フットボールは変わり、トータルにグレードアップしている」
自らの成功体験に基づき、近代フットボールはアスリート色が強すぎる、と断罪する意見もわからないではない。ただ、技巧派の著しい減退は、やはり寂しい。
だが、ヴィエリは「俺たちの時代のカルチョは遅れていた」とも語り、フットボールの今に携わる人々に敬意を表している。他人を寄せつけなかった現役当時のイメージをふまえると、「ポゼッション? ハイブリッド? しゃらくせえっ!」と一蹴するかに思われたが、意外にも丁寧な答えが返ってきた。
個人主義者と思われたヴィエリが認める近代フットボールはさらに磨きがかかり、世界中を虜(とりこ)にするに違いない。そして愛するインテルがヨーロッパを制した時、彼はどのようなコメントを発するだろうか。
稀代のストライカーは優しく、熱く、古巣の戴冠を心待ちにしている。
著者プロフィール
粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。
【図】ヴィエリが愛した古巣インテルの2024-25シーズン基本布陣
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