オリバー・カーンに「神」が宿った2001年CL決勝 ゴール前のすさまじい圧力に相手は皆おじけづいた (3ページ目)
【勝利の女神はカーンを見放さなかった】
勝者と敗者のコントラストは残酷だ。狂気乱舞するマンチェスター・U。バイエルン側は何が起きたかわからないかのように、ローター・マテウスが呆然としていた。サミュエル・クフォーは何度も、何度もピッチに拳をたたきつけ、カーンは所在なげに視線を落とす。90分まで完璧だったプランが1分42秒で覆されてケースはおそらくない。
だが、勝利の女神はカーンを見放さなかった。2000-01シーズンのチャンピオンズリーグ決勝、対バレンシア戦である。
1‐1のまま120分が終わり、決着はPK戦に委ねられた。先攻のバイエルンは、一番手のパウロ・セルジオがバーの上に大きく外した。イヤな流れである。何人かの選手は動揺を隠せなかった。
さぁ、カーンに見せ場がやってきた。バレンシア3番手ズラトコ・ザホヴィッチのキックを右に飛んで弾き飛ばし、4番手アメデオ・カルボーニの一撃は右腕一本でストップする。ゴールデンゴールに入り、7番手マウリシオ・ペジェグリーノのキックは両腕でブロックした。
PK戦、5-4。カーンの神がかったセーブにより、バイエルンはヨーロッパを制した。
なお、彼が全盛期を迎えた2000年代のバイエルンは無双だった。ブンデスリーガ6回、DFBポカールも5回優勝している。
近代フットボールのGKは、守備範囲の広さと、攻撃の起点となるべきキック力が必須とされている。今シーズン、ローマでブレイクしたミレ・スヴィラルが好例だ。マンチェスター・シティがスカウトを派遣した事実も確認されている。
カーンはキックの精度こそ現代のGKに劣るが、守備範囲は広く、特に前方向に滅法強かった。すさまじい圧力に相手がおじけづき、シュートを外す。
さらにジャンプ力に長け、セービングもやや後ろに飛ぶようにして距離が出た。188cmとGKとして大柄ではなかったこの男がワールドクラスのGKになり、ティタンと名づけられたのは、心身のストロングポイントを存分に生かしたからにほかならない。
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