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バルセロナがチャンピオンズリーグで見せた「誇るべき敗者」の姿 クラシコで今季の集大成へ (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【17人中10人が下部組織出身だった】

 しかし、バルサは1980年代末にクラブ中興の祖であるヨハン・クライフ監督が植えつけた哲学「相手より1点多く取れば勝利」を高らかに証明した。一貫した攻撃サッカーを継承。下部組織ラ・マシアから理念を叩き込まれた選手が中心で、この日、ピッチに立った17人のうち、ヤマルを筆頭に10人がラ・マシア出身者だった。

「我々は勝利のためにプレーした。選手は家に帰って鏡に映る自分の姿を見て、誇りに思うだろう」

 今シーズンからチームを率いるハンジ・フリック監督はそう語ったが、伝統の「自分たちがボールを持っていれば負けない」を、ハイプレス、ハイラインの術式に組み込んでいる。たとえ裏を突かれて失点を重ねても、ラインを下げることを許さなかった。失点以上に得点を重んじた結果、プレーモデルは完成度を増した。その危うさも含めた魅力がバルサの真実で、誇るべき敗者の姿だ。

「バルサを下すには"とびっきりのインテル"が必要だった」

 インテルの指揮官シモーネ・インザーギはそう振り返っている。

 5月11日、バルサはラ・リーガ第35節、2位レアル・マドリードと"クラシコ"で対決する。両者の勝ち点差は4。残り試合を考えれば、勝てば事実上の優勝が確定する。スペインスーパー杯、スペイン国王杯はそれぞれレアル・マドリードを退けて戴冠しているだけに、今シーズンの集大成となるはずだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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