検索

アリエン・ロッベンのドリブルはわかっていても止められなかった「隙のないDFなんて、この世にはいない」 (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【ロッベンなしに連覇はなかった】

 この間に隙をついたのが、ライバルのチェルシーである。PSVに1800万ポンド(約24億3000万円)を提示し、いとも簡単に交渉をまとめた。

 それにしても......と、つくづく思う。サー・アレックスは衰えが見え始めたライアン・ギグスの後釜に、当時は左ウイングだったロッベンを据えようとしていた。クリスティアーノ・ロナウドやウェイン・ルーニー、ポール・スコールズとの共演を、一度でいいから見たかった。

 20年ほど前のフットボールは現在ほどポジションレスではなく、偽サイドバックも偽9番も存在しない。センターフォワードがサイドに流れたり、中盤に降りたりするケースは稀(まれ)で、ウイングはチャンスメイカーだった。

 チェルシーに新天地を求めたロッベンも左ウイングにほぼ固定され、縦の突破が基本的なタスクだった。得点は絶対的エースのディディエ・ドログバ、MFながらプレミアリーグ通算177ゴールのフランク・ランパードに託されていた。

 18試合/7得点・9アシスト(リーグ2位)、28試合/6得点・3アシスト、21試合/2得点・4アシスト......。右の中足骨骨折、精巣腫瘍(早期発見で完治)などが影響したとはいえ、チェルシーにおける3シーズンのデータは物足りない。

 特に2得点・4アシストに終わった2006-07シーズンは、ロッベンも悔いが残っているだろう。オーナーのロマン・アブラモヴィッチが独断専行し、ACミランからアンドリー・シェフチェンコを獲得。フォーメーションが4-3-3から4-4-2に代わり、2トップはドログバとシェフチェンコが基本だった。

 4-3-3はプランBになり、左ウイングを定位置としていたロッベンの存在感が薄れていく。ただし、ジョゼ・モウリーニョは次のように語っていた。

「データに現れない貢献というものがある。ロッベンがいなければ、2004-05シーズンからの連覇は難しかった」

 前述のネヴィルやモウリーニョのコメントが、ロッベンのハイレベルを物語っている。

2 / 4

キーワード

このページのトップに戻る