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抜群の攻撃力誇るバルサと堅守速攻のインテルが激突...チャンピオンズリーグ(CL)4強決定 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【好勝負必至のPSG対アーセナル】

 バルサといえば17歳のヤマルが何かと取り沙汰されるが、貢献度で勝るのは今季これまで12ゴールをマークしているラフィーニャだ。左ウイングでありながらCLの得点ランクで2位に入る高い決定力を魅せている(1位は13ゴールのセール・ギラシ/ドルトムント)。

 何より光るのは優れたポジション感覚だ。ブラジル人選手にはあまり見かけない動きをする。ブラジル人の左ウイングと言えば、ガブリエル・マルチネッリ(アーセナル)とヴィニシウス・ジュオニール(レアル・マドリード)を想起するが、ラフィーニャも負けていない。10年ぶりの優勝を狙うバルサの、浮沈のカギを握る選手と言っても言い過ぎではない。

 一方、PSG対アーセナルは全くの互角。好勝負必至である。PSGはグループリーグの終盤まで下位を彷徨っていた。際どく勝ち上がってきたチームだが、ここにきての伸び率は他の3チームを大きく上回る。冬の移籍でナポリからジョージア代表クビチャ・クワラツヘリアを獲得したことが大きい。ラフィーニャもそうだが、右も左もできる多機能型選手でありながら、縦突破と切れ込んでのシュートの両面を、どちらのサイドでもバランスよく発揮する。文字どおり今日的なウインガーである。

 さらに、19歳のフランス人ウインガー、デジレ・デュエも右肩上がりの成長を見せる、PSGに欠かせない選手である。この選手も右も左できる多機能型で決定力もある。中心的であるウスマン・デンベレ、さらにはもうひとりのウインガーであるブラッドリー・バルコラについても同じことが言える。つまりPSGのアタッカー陣は、すべてウインガータイプということになる。一本調子になりやすい面なきにしもあらずだが、ツボにハマれば破壊力満点なので、そのあたりは試合展開に懸かっている。自慢のドリブル&シュートは遅攻より、速攻のほうが活きるかもしれない。

 アーセナルは、前回覇者で通算15度の優勝を誇るレアル・マドリードに完勝したことで、さぞ自信をつけたに違いない。CLを制した経験がこのクラブにはない。その点でリバプール、マンチェスター・シティ、チェルシーとは一線を画す。アーセナルの弱みはそこになる。ただしPSGも優勝経験がないという点では一致する。先述のとおり、ブックメーカー各社の予想ではPSGが若干有利となっている。

 準決勝でチャレンジャーになるのはどちらか、受けて立つのはどちらか。それぞれの立ち位置も実際の対戦に大きな要素として絡んでくる。レアル・マドリードに対してはチャレンジャー精神を貫くことができたアーセナルは、PSGに対してはどうなるか。最も目を凝らすべきやはりウイング対決だろう。サイドを制したものは試合を制す。そんな展開になる気がする。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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