久保建英の出場時間が調整される理由 スペイン人記者が明かすレアル・ソシエダの苦しいチーム事情 (3ページ目)
【「恥ずべき試合」でもメンタルの強さを見せた】
ベストメンバーで全力を尽くしたにもかかわらず、ラ・レアルはヨーロッパリーグ(EL)でラツィオに完敗した。まったく攻撃できず、あらゆる面で劣り、なかでもフィジカル面の差が顕著となり、セットプレーでやられてしまったのだ。
アイエン・ムニョスのレッドカードがとどめとなり、イマノルはハーフタイムに敗戦濃厚であることを認め、3本の柱に休養を与える選択をした。そのうちのひとりが、ほとんどボールに触れられなかった久保だった。この交代により、次の古巣ヘタフェ戦で再びスタメンに名を連ねることができた。
ヘタフェ戦での久保はチームが悲惨な状況に陥ったなか、唯一の"オアシス"となった。最初こそ身を隠していたが、前半途中からヒーローのマントを纏って輝きを放ち、チームに数少ない決定機をもたらした。
完璧な3度の切り込み、正確なクロス、ベニャト・トゥリエンテスへの鮮やかなスルーパス......。0-3で負けている状況下で最も魂を込めてプレーした選手であり、ほぼひとりでチャンスを生み出した。
しかし、またしても物事はうまくいかなかった。チームはそのまま0-3で敗れ、久保は絶望する。試合後の彼の発言は辛辣だった。うんざりした表情を浮かべた様子はチームの現状を如実に表わしていた。
「僕たちにとって恥ずべき試合だった。サポーターに謝りたい。彼らは拍手を送ってくれるが、僕たちにはその資格がない」とレアレ・アレーナに駆けつけた人々に対する謝罪を口にした。
久保は自分たちのプレーがまったくできなかったことを反省しつつ、「流れを変える必要がある」と前を向く発言をするも、「今日は本当に何もいいところがなかった。チームに何が起こっているのかわからない。先週はとてもよかったのに、今週は3試合とも負けてしまった。これまで以上に団結する必要があるが、3連敗した後だとここに来て話をすることにあまり意味はない」と、やり場のない気持ちも吐露した。
それでも立ち止まっていられない状況に、「木曜日(ELのPAOK戦)は今日よりもいい試合ができるように頑張るよ。悲しんでいる暇はない。サッカーの一番いいところは試合が何度もあること。もし週に1試合しかなければ、僕たちは100%文句を言っているだろう。3つのコンペティションがあることに感謝しているよ。すべてにおいて改善できるように努力しなければならない」と気持ちを切り替えた。
そのメンタルの強さも、彼の魅力のひとつなのだ。
(髙橋智行●翻訳 translation by Takahashi Tomoyuki)
著者プロフィール
高橋智行 (たかはし・ともゆき)
茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、リーガ・エスパニョーラを中心としたメディアの仕事に携わっている。
【画像】久保建英のレアル・ソシエダほか ヨーロッパサッカー今季注目16クラブの主要フォーメーション
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