久保建英に「試合巧者」の洗礼 ソシエダ、ヨーロッパリーグ首位のラツィオに苦杯 (2ページ目)
【極めてスペイン的な選手】
32分、イタリア代表マッティア・ザッカーニが久保に縦を遮られたことでカットイン。ライン間の味方を見つけ、そこからの連係でニアゾーンを崩すと、折り返しをザッカーニが決めた。一瞬の出来事だった。退場者が出たことで気落ちし、MFのマルティン・スビメンディがバックラインに入っていた混乱を見事についた形だ。
イタリア特有の"相手の傷口をえぐり、仕留める試合巧者ぶり"と言える。
34分には、やはり左サイドのタバレスがほとんどフリーで速く重く落ちるような軌道のクロス。これをアルゼンチン代表バレンティン・カステジャーノスが完璧なヘディングで合わせた。急造センターバックの弱点を突いた格好だった。
これでラ・レアルは万事休すだった。
スペイン勢のクラブはボールプレーの質にロマンを求めるところがあり、イタリア勢のクラブの勝負に特化した戦い方を苦手にしている。ひと昔前ほどではないが、それは消えない伝統だろう。これは優劣というよりもかみ合わせの問題で、その証拠に、スペイン人のセリエAでの成功者、イタリア人のラ・リーガでの成功者の数は、多くの選手が行き来してきたにもかかわらず、限られている。
ラ・リーガのスペイン人選手たちは、どうやって相手の裏をかくか、タイミングをずらすか、そこにプレーの醍醐味を感じさせる。一方、セリエAのイタリア人選手はまずズレを起こさせない防御策を講じ、生じた動揺を逆に利用し、要所に配した個人によって決着をつける。対照的なスタイルだ。
そして久保は、タイミングの天才である。極めてスペイン的なプレーヤーと言える。わずかな動きで相手の逆を取って、優位に持ち込む。プレーを重ねるなかで、それを増幅させるアタッカーだ。
「タケは相手のタイミングをずらすプレーを得意としている。敵に次のプレーを読ませない。あるいは読ませても、次に裏をかくようなプレーを繰り出せるのが特徴だ」
そう語っていたのは、Sportivaのご意見番で、ラ・レアルで強化部長などの要職を20年間も務めてきたミケル・エチャリだ。
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