バルセロナで絶好調のラフィーニャが拓いた新境地 「第二トップ下」とは? (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【新境地のポジション・役割で万事収まる】

 ラフィーニャのトップ下適性が確認されると、ダニ・オルモがフィットした段階で左ウイングに起用されるようになった。第二トップ下だ。

 これはフリック監督の戦術の重要な役割であるだけでなく、選手の組み合わせにおけるラストピースにもなった。もし、ラフィーニャが従来の右ウイングしか適性がなかったら、ヤマルかラフィーニャかの選択をするしかなかったからだ。ふたりの共存という意味でも、好都合なコンバートだったと言える。

 左サイドから高速のクロスボールでレバンドフスキにチャンスを与え、中央ではダニ・オルモやペドリと連係。空いたスペースを見つけて間髪入れずに走り込むセンスも、縦への攻め込みを重視する新監督の戦術にフィットしている。

 ブラジルのポルト・アレグレの出身だが、ユース年代のトーナメントでデコに見いだされ、ポルトガルのヴィトーリア・ギマランイスでプロデビューしている。デコはブラジル人だがポルトガルに渡って成功し、その後バルセロナでもプレー。ポルトガル代表の10番も背負った名手だった。

 言語が同じということもあり、ブラジルの若手選手にとってポルトガルリーグは登竜門的な位置づけになっている。ラフィーニャも名門スポルティングを経て、レンヌ(フランス)、リーズ(イングランド)、バルセロナ(スペイン)とステップアップしていった。

 バルセロナでは左利きの右ウイングとして主力としてプレーしていたが、ヤマルの台頭もあって今季はポジション確保が危ぶまれていた。そのタイミングで新境地を拓いたのは本人にとっても大きかっただろう。

 バルセロナ1年目はリーグ7得点、2年目は6得点、3年目の今季はすでに5ゴール。早々に自身の最多得点を塗り替えるのは確実で、このペースなら20ゴールを超える。

 ネイマールが長期欠場中のブラジル代表にとっても、新しく生まれ変わったラフィーニャは朗報に違いない。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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