バルセロナで絶好調のラフィーニャが拓いた新境地 「第二トップ下」とは? (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【サイドからの中央へのコンバートは出世コース】

 ウイングから中央へのコンバートは昔から成功例は多く、古くはリーベルプレート(アルゼンチン)の右ウイングだったアルフレッド・ディ・ステファノ(1950年代に活躍)がレアル・マドリードでは「偽9番」としてスーパースターに上り詰めているし、マンチェスター・ユナイテッドとイングランド代表のプレーメーカーとして名を馳せたボビー・チャールトン(1960年代に活躍)も元ウイングだった。

 クリスティアーノ・ロナウド、リオネル・メッシ、ネイマール、ベルナルド・シウバ、コール・パーマー、フィル・フォーデンなど、サイドアタッカーがCFや攻撃的MFとして大成するパターンはスーパースターへの出世コースなのかもしれない。

 10代でプロデビューする逸材は、最初はウイングで起用されがちである。サイドの1対1で、持ち前の技術とスピードを気兼ねなく発揮させようという狙いだろう。やがてゴールゲッターやプレーメーカーとしての才能が目立つようになった段階で、中央のポジションへ移される。

 ただ、優れたウイングが、必ずしも優れたゴールゲッターやプレーメーカーに変身できるわけではない。

 タッチラインを背にできるウイングは基本的に背後を気にしなくていい。180度の視野でプレーすればよく、スペースもある。一方、中央のポジションとなれば前後左右から敵が来るし、スペースも時間も限られる。判断とプレー選択の点ではサイドと中央はかなり違いがあり、サイドでいい選手でも中央に適性があるとは限らず、むしろ違う能力を要求される。

 プレシーズンマッチでラフィーニャが4-2-3-1のトップ下で起用された時は、ダニ・オルモが来るまで(※8月9日に契約)の「代役」ではないかとも思った。ところが、ラフィーニャはすぐに中央での適性を示していた。

 狭いスペースでもワンタッチで前を向ける。相手を背負っても受けられる。素早くボールをリリースして周囲を活かす。さらに前線へ飛び出してゴールを奪い、決定的なパスも供給する。守備時の切り替えの速さ、献身的な姿勢もフリック監督の構想に合っていた。

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