南野拓実は欧州サッカーシーンでタフに生き抜く 本領発揮は「ゴール前」
西部謙司が考察 サッカースターのセオリー
第15回 南野拓実
日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。今回はフランスのモナコで見逃せない活躍を続けている、日本代表・南野拓実を取り上げます。攻撃のあらゆるポジションを務めてきた南野選手の本来の特長は、どこにあるのでしょう?
【バルセロナ戦勝利に貢献】
開始10分、バルセロナのGKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンからエリック・ガルシアへのパスに南野拓実が寄せる。奪って、ペナルティーエリアへ突入しようとしたところでエリック・ガルシアがファウル。決定的得点機会阻止で退場となった。
モナコで3シーズン目の南野拓実 CLでバルセロナを破るなど活躍している photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る UEFAチャンピオンズリーグの初戦、モナコはバルセロナに2-1で勝利。この試合で最も活躍したのは先制点をゲットしたマグネス・アクリウシェだと思うが、ある意味最も決定的な仕事をしたのは南野拓実である。エリック・ガルシアを退場に追い込んだことで、バルセロナのゲームプランは大きく変わらざるを得なかったからだ。
アンカーポジションのエリック・ガルシアがいなくなったことで、バルセロナは4-2-3のシステムになった。バルセロナは、前方中央部に多くの選手を集める攻撃を今季の特徴としている。センターフォワード(CF)のロベルト・レバンドフスキ、トップ下に加えて、ウイングのひとりとボランチのひとりも中央へ集まるオーバーロード。そこでの素早いパスワークと裏への抜け出し、中央と見せてサイドのラミン・ヤマルを使った攻撃で得点を量産している。
そのストロングポイントが、10人になったことで使えなくなった。たんにひとり減ったというにとどまらないダメージだったわけだ。ボールポゼッションはモナコ55%、バルセロナ45%。バルセロナはそもそもボール支配率で負ける戦い方を想定していない。試合内容は10人にもかかわらずほぼ五分ではあったが、枠内シュートはモナコ8本に対してバルセロナはわずか1本と大差をつけられた。
エリック・ガルシアの退場を誘発した南野は、それまでほとんどボールに触っていなかった。ほぼ最初のプレーで試合の趨勢を決める貢献をしたわけだ。
結果にコミットする点で、南野らしい貢献の仕方だったかもしれない。わかりやすい結果を出すことで、存在価値を証明し続けた選手なのだ。
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プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。