南野拓実は欧州サッカーシーンでタフに生き抜く 本領発揮は「ゴール前」 (2ページ目)
【マルチなようで特化型】
セレッソ大阪、ザルツブルク、リバプール(サウサンプトンへの貸し出しあり)、そして現在のモナコ。その間、南野はサイドハーフ、インサイドハーフ、CF、トップ下と攻撃のポジションをすべて経験しているため、攻撃のマルチプレーヤーと認識されているかもしれないが、実はそんなに器用なタイプではない。
一応それぞれこなしてはいるのだが、どのポジションにいても南野が力を発揮するプレーは決まっている。それに関しては、C大阪時代のレヴィー・クルピ監督のコメントが興味深い。
「中央でよりゴールに近い位置でプレーしていれば、もっと多くのゴールを決めることができただろう」(クルピ監督)
中央のゴール近く。そこでプレーすれば「日本の将来を背負って立つ選手だ」と評価していた。ただ、チーム事情から「サイドでしっかり守ってから攻撃するという役割」を与えざるを得なかった。それについても「自己を犠牲にしてやってくれた」と評価しているが、中央で使えなかったことについては「私の責任」と話している。プロデビューの段階で、南野という選手を非常に的確に表現していたと思う。
運動量が豊富でアジリティに優れ、大きくはないがコンタクトにも強い。そして献身的で貪欲。だからサイドでもプレーできる。ただし、サイドの1対1で仕掛けて突破するドリブラーではなく、クロッサーでもない。本領はゴール前なのだ。
とはいえ、CFとしてトップを張るタイプでもない。どこでもこなせるようでいて、実はトップ下しか居場所のない選手である。しかもゲームを作るトップ下ではなく、自分で得点するか、味方に得点させるか。得点に直結するプレーに集約されている。
リバプール時代は厚い選手層に阻まれてプレミアリーグでの出場機会は限定されていたものの、2021-22シーズンのFAカップとカラバオカップ(リーグカップ)二冠の立役者になっている。カラバオカップは5試合で4得点、FA杯4試合3得点。いずれもチーム内得点王でトップクラスの決定率だった。
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