プレミアリーグのニューカッスルが来日 サッカーに熱狂するイングランド北部クラブの長い歴史と背景
連載第8回
サッカー観戦7000試合超! 後藤健生の「来た、観た、蹴った」
なんと現場観戦7000試合を超えるサッカージャーナリストの後藤健生氏が、豊富な取材経験からサッカーの歴史、文化、エピソードを綴ります。今回は、今週来日してJリーグクラブ対戦する、プレミアリーグのニューカッスルについて。サッカーに熱狂的なことで知られるイングランド北部のクラブの、その理由と歴史を紹介します。
プレミアリーグのニューカッスルが来日。熱狂的な応援で有名なイングランド北東地域のクラブだ photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る
【低迷期を脱出したニューカッスルが来日】
7月下旬から8月上旬にかけて各国の強豪クラブが来日して、Jリーグクラブとの親善試合が行なわれている。
しかし、この時期の欧州クラブはシーズン開幕前のチーム作りの段階。一方、迎え撃つJリーグ勢もシーズン前半戦の疲労が溜まった状態だ。したがって、内容的には真剣勝負にはほど遠い"公開トレーニングマッチ"になってしまうことが多い。
先日、国立競技場での鹿島アントラーズとブライトンの試合を見に行ったら、日本在住歴が長いあるベテラン英国人記者が「自分はイングランド南部サセックス地方出身なので少年時代にはよくブライトンの試合を見に行ったが、生でブライトンを見るのはそれ以来、数十年ぶりだ」と笑っていた。
サセックス地方をはじめ、イングランド南部にはプレミアリーグの強豪クラブはほとんど存在しない(ブライトンも2017年にプレミア入りするまでは下位リーグが定位置だった)。強豪が集中しているのは首都ロンドンやイングランド北部だ。
北西部ランカシャー地方にはマンチェスター市やリバプール市があり、どちらにも2つの超名門クラブが存在するのはご承知のとおり。また、北東部ノーサンバーランド地方にはニューカッスルやサンダーランドがある(両都市は現在、ノーサンバーランド州から独立したタイン・アンド・ウィア州に属している)。
そのニューカッスル・ユナイテッドも間もなく来日して、浦和レッズ、横浜F・マリノスと対戦する。長く低迷していたニューカッスルだが、2021年にサウジアラビア資本に買収されて低迷期を脱したところだ。
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著者プロフィール
後藤健生 (ごとう・たけお)
1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2022年12月に生涯観戦試合数は7000試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。