中井卓大の新天地に複数のポジティブ要素 レアルの選手としてラストチャンスを生かせるか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 逆説すれば、中井がアモレビエタでポジションをつかめないようなら、ラ・リーガでの成功は厳しい。スペインでは21歳以下までが育成年代としてやや"猶予"を与えられるが、そこから先はシビアだ。

 中井が今季も同じような成績で終わった場合、レアル・マドリードは投資を回収するために容赦なく売却に動くだろう。それはJリーグかもしれないし、オイルマネーの国が候補になるかもしれない。彼らが契約を延長したのは期待の表われだが、ビジネスでもあるのだ。

 レアル・マドリードの看板を背負う選手としては、これがラストチャンスになる。

「3部だったら、Jリーグに戻るべき」

 そんな意見もあるようだが、ナンセンスである。3部であろうと、レアル・マドリードの栄光と直結している、その好機を逃す手はない。そもそも、昨今は多くのJリーガーが、ベルギーやトルコであっても欧州に新天地を求めている。20歳の中井が日本に戻る道理はない。今や深刻な円安で、日本人が思っている以上に、収入ののびしろも、欧州にいるほうがはるかに大きく見通せる。何より本場の空気は魅力だ。

 今年10月で21歳になる中井は、スペインで3度目の3部リーグに挑む。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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