中井卓大の新天地に複数のポジティブ要素 レアルの選手としてラストチャンスを生かせるか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【指揮官は元ファンタジスタ】

 しかも、チームを率いるのはアスレティック・ビルバオのワンクラブマンとして現役を終えたフレン・ゲレーロである。

 ゲレーロは、1990年代のスペインを代表するバスク人ファンタジスタで、稀代の貴公子としてスペインサッカー史上、最も女性人気を集めた。そのプレーはテクニカルかつ優雅で、バルセロナとレアル・マドリードが空の小切手で獲得を目指したほどだった。引退後はスペイン代表のアンダー世代の監督を4年間にわたって務めるなど、若手の力を引き上げる実績も残しているだけに......。

 楽観的な予想かもしれないが、天才と言われたゲレーロは、中井のよき理解者になれるのではないか。

 中井はボールを持ったら、間違いなく力がある。ビジョンやテクニックは、同年代でトップレベルだ。しかし、スピードがあるわけではなく、仕掛けを含めた得点力も高くはなく、とりわけ守備のパワーが足りない。

「オールラウンドに見えるが、実はポジションがない」

 その矛盾を解決する必要はあるが、それができたら自ずと道は開けるだろう。

 スペイン紙『EL CORREO』は中井のアモレビエタ入団について、以下のように伝えている。

「ピピ(中井の愛称)は中盤で機敏さを見せる選手で、センターハーフでも、トップ下でもプレーできる。得点力のあるタイプで、ドリブルやキックなどの技術が高いだけでなく、守備のタスクもしっかりとこなす。中盤のあらゆるポジションができる。(レアル・マドリードが)2026年(6月末)まで1年契約を延長し、交渉の末にアモレビエタにやってきた」

 ポテンシャルを重視した甘い見立てだが、レアル・マドリードで薫陶を受けた選手は、"産地"だけで有力銘柄になるのだ。

 最後に、アモレビエタが「悪くない選択」と言える理由は、バスクのクラブであることだろう。バスク人は日本人に対し、あからさまな差別がない。また、日本人の性格的特徴である真面目さや献身性を高く評価する傾向がある。その点ではややドイツに近く、おかげで過去に日本人が苦しんできたスペインで、乾貴士、久保建英(後者はスペイン人よりスペイン人らしいのだが)は最高の成績を叩き出している。

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