ユーロ2024のスペインは「多様な人種の融合」の勝利 欧州サッカーに続く「地殻変動」 (2ページ目)
【「きれい」になったスペイン】
そんなタイミングでニコとヤマルは登場。不足していたパーツをきれいに補うことになった。
彼らはともに移民の子どもだ。動き的にも従来のスペイン人選手像から外れる。多様な人種がうまく融合した結果による優勝、と捉えることもできる。
人種に関して筆者が最初にカルチャーショックを受けたのは、マリユス・トレゾール、ジェラール・ジャンビョン、ジャン・ティガナを擁してベスト4入りした1982年スペインW杯のフランス代表。次がルート・フリット、フランク・ライカールトを擁して優勝した1988年欧州選手権のオランダ代表になる。
そしてそれは、1998年フランスW杯で決定的なものとなる。アルジェリアにルーツを持つジネディーヌ・ジダン率いる開催国フランスがブラジルを破り初優勝に輝いた時、かのヨハン・クライフは勝者を「人種が融合した崇高なる結果である」と讃えたことが忘れられない。
フランスやオランダのそれぞれの歴史を辿れば、納得できる話ではある。驚いてはいけない話なのかもしれない。以降、その波はドイツ、イングランド、ベルギー、スイスなどに広がっていき、そして今回、スペインにも遅まきながら伝播した。
両ウイングにスペイン以外の国と地域をルーツに持つ選手を注入した今回のスペイン代表チーム。真ん中に固まりがちだったスペインのサッカーは、内と外とのバランスがよくなり、総合力向上のみならず、見た目にもきれいになった。
その一方で、きれいさが落ちた国もある。その筆頭はフランス。プレーが常に暴れている感じで、落ちつきに欠けた。シャレの効いたパス回しを売りにしたミシェル・プラティニ時代のフランスとは正反対のチームになったと言っても過言ではない。フランスを見ていると、一時期のアフリカ諸国のサッカーを想起させた。その最高位は2018年ロシアW杯まで、ベスト8だった(2022年カタールW杯でモロッコがようやくその壁を突破した)。
2 / 3