ユーロ2024、前回王者イタリア敗退の原因は駒不足と作戦ミス サッカー強国の座から転落した節目の日に (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【優れた左ウイングがいない】

 スイス戦。4-3-3の左ウイングとして先発したのは、今大会初出場のステファン・エルシャーラウィ(ローマ)だった。しかし、こう言っては何だが、峠をすぎた31歳だ。スパレッティが変則システムで臨んだ理由がわかる気がした。人材難である。

 右のフェデリコ・キエーザ(ユベントス)が、列強国のウイングにも見劣りしない、あるレベルに達したウインガーであるのに対し、左は落ちる。前半だけで引っ込んだエルシャーラウィ、そしてこの日、交代で出場したマッティア・ザッカーニ(ラツィオ)は、言ってみれば国内級だ。

 つまり4-3-3という攻撃的かつオーソドックスな4バックを組んでも、各ポジションの特性に相応しい駒が揃わないのである。ニコ・ウィリアムズ、ラミン・ヤマルという両ウイングを擁し、右肩下がりの状況から脱したかに見えるスペインとの違いを見る気がする。

 スイスはイタリアに対し5バックで臨んできた。といってもクロアチア戦に臨んだイタリアの3-3-2-2より攻撃的だった。3-4-2-1ではなく3-4-3になる時間が多い5-2-3。両サイドにウイングバックとウイングを擁す、サイドアタッカー各2枚の3バックである。

 前半30分までのデータによれば、ボール支配率の関係はスイス65%対イタリア35%だった。一般的な5バック対4-3-3の対戦ではあり得ないデータである。イタリアの4バックがいかに機能していないか。そしてスイスの5バックが一般的な5バックではないことの証でもあった。

 先制点が生まれたのは前半37分。サイドで開いて受けた左ウイング、ルベン・バルガス(アウクスブルク)が、真ん中を走ったMFレモ・フロイラー(ボローニャ)にパスを送った次の瞬間、その左足が火を吹いた。

 追加点は後半開始早々。キックオフからニコロ・ファジョーリ(ユベントス)のパスを引っかけて奪うと、スイスは再び左サイドに拠点を作った。ミシェル・アエビシェール(左ウイングバック/ボローニャ)、グラニト・ジャカ(MF/レバークーゼン)、バルガスの3人のパス交換で数的有利な状況を築き上げ、中央に侵入。バルガスがインフロントでミドルシュートを放つと、イタリアの名GKジャンルイジ・ドンナルンマ(パリ・サンジェルマン)の指先をかい潜るようにゴール右上隅に吸い込まれていった。イタリアの息の根を止める、事実上のダメ押しゴールだった。

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