ユーロ2024、前回王者イタリア敗退の原因は駒不足と作戦ミス サッカー強国の座から転落した節目の日に (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【見せ場を作れずに敗れ去った】

 それでもなんとかユーロで実績を残してきた最大の武器は、"サッカー勘"だった。サッカー競技に適したイタリア人ならではの気質で、なんとか堪えてきた。今回も、たとえばグループリーグ2戦目のスペイン戦は大敗しても不思議のない内容だった。そこをなんとか粘り、接戦(0-1)に持ち込むあたりはイタリアらしかった。イタリア人選手としてのプライドを感じたが、このスイス戦はそれさえも失われていた。何も見せ場を作れずに敗れ去った。

 怪しさはグループリーグ最終戦のクロアチア戦で見え隠れしていた。ルチアーノ・スパレッティ監督がこの試合に臨んだ布陣は5バックになりやすい3-3-2-2で、従来の変則4バックより守備的な作戦だった。

 ところが作戦は失敗する。後半10分、クロアチアに先制されてしまったのだ。するとスパレッティ監督は、ただちに布陣を4バックに変更する。後ろで守る作戦から、前から守る作戦に変更した。だが、その理屈に選手は急に従えない。笛吹けど踊れない状態が続いた。このグループの2位を確保するべく同点弾が生まれたのは最終盤の後半52分。まさにタイムアップ寸前の出来事だった。

 イタリアのメディアはおそらく、采配ミスであるとスパレッティを追求したに違いない。その結果、スパレッティはこのスイス戦に4-3-3で臨んだ。3-3-2-2と4-3-3。違いはひと目でわかるはずだ。

 グループリーグのアルバニア戦とスペイン戦で採用したスパレッティの4バックは、先述の通り変則だった。左サイドバック、フェデリコ・ディマルコ(インテル)が高い位置を取る3バックと4バックの中間のような布陣で、その分、本来なら左ウイングの位置にいるべきロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)は、トップ下の選手のように構えた。森保一監督が日本代表のシリア戦で採用した3バックと、サイドが違うだけで理屈的にはほぼ同じだった。日本はシリア相手に後手を踏むことはなかったが、イタリアの場合はそのアンバランスぶりが非効率を招き、攻めあぐむ原因となった。

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