EURO史上最高ランクの決勝戦 名勝負が続いた2008年、スペイン黄金時代が始まった
愛しのユーロ(4)~2008年
6月14日(現地時間)、ドイツ対スコットランドで幕を開けるEURO2024(欧州選手権)。4年に一度のEUROでは、これまでの各大会に、日本のサッカーファンをも惹きつける人気の代表チームがあった。1992年のオランダ、2000年のフランス......そして2008年はスペインに注目が集まった――。
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ポルトガルで開催されたEURO2004は、旅情をかき立てられるいい大会だったが、オーストリアとスイスで共催されたEURO2008も負けず劣らずいい印象の残る大会で、なんと言っても好試合が多かった。
オーストリア、スイスといえば、欧州のサッカーどころとは言えない。日本から足を伸ばす機会は、サッカー絡みではそう多くないだろう。ただ、ある時期、ウインタースポーツの取材現場にせっせと足を運んでいた筆者には、土地勘があった。
たとえば、スペインが初戦をロシアと戦ったインスブルックなどは、スキージャンプのW杯取材で何度か訪れていた。ジャンプ週間と言われる、年末から年始にかけてドイツ、オーストリア両国で行なわれる伝統ある4連戦の3戦目の舞台となるのがインスブルックで、開催日は毎年1月4日と決まっている。
だから、あたり一帯の冬景色には見慣れていた。しかし、緑眩しい初夏の景色を見るのは初めてだった。牧歌的な山間の都市に、サッカー観戦のためにロシア、スペイン両国のサポーターが3万人もやってきた。これもビジュアル的に新鮮だった。
当時、ロシア人といえば大金持ちの代名詞だった。サポーターというより、半分スポンサーのような上客と言うべきだろう。しかし、現場でそれ以上に目を奪われたのがスペイン人サポーターだった。
EUROの現場にいると、各国の代表チームを応援する熱量がそれほど高くないことに気づく。ドイツ、オランダ、イングランドあたりはともかく、フランス、イタリア、スペインになると、物足りなさを覚える。数は少なく、声も小さい。だが、インスブルックにやってきたスペイン人は、珍しく気合いが入っていた。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。