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EURO史上最高ランクの決勝戦 名勝負が続いた2008年、スペイン黄金時代が始まった (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【母国オランダを破ったヒディンクの独演会】

 スペインはEURO2004でグリープリーグ敗退。2006年ドイツW杯でもベスト16に終わっていた。反撃のきっかけはバルセロナだった。2005-06シーズン、14シーズンぶりに欧州一に輝いたことで、代表チームの編成も、レアル・マドリード主体からバルサ主体に変化した。長らく主将を務めたラウル・ゴンサレスが外れ、シャビ・エルナンデスがその役に就いたことが代表のバルサ化を象徴していた。

「カタルーニャ人が代表チームに関心を抱くようになったことが大きい。国中がひとつになって代表チームを応援する喜びを、スペイン人が初めて知った大会だった」と、後にあるスペイン人記者は語っていた。

 スペインは決勝でドイツを1-0で破り、1964年大会以来44年ぶりの優勝を飾った。

EURO2008で44年ぶりに優勝を果たしたスペイン代表 photo by Reuters/AFLOEURO2008で44年ぶりに優勝を果たしたスペイン代表 photo by Reuters/AFLOこの記事に関連する写真を見る 自慢は中盤だった。先述のシャビに加え、アンドレス・イニエスタ、セスク・ファブレガス、ダビド・シルバなどの名前がパッと出てくるだろうが、筆者のお気に入りは、ビジャレアルでプレーしていたブラジル系選手、マルコス・セナだった。他のスペイン人MFとは少しばかりリズムが異なる独特のボール運びが、目に優しく飛び込んできたのだった。

 EURO2008でスペインが苦戦した試合は、延長、PK戦に及んだ準々決勝のイタリア戦と、続く準決勝のロシア戦だった。ロシアは初戦でスペインに1-4で敗れたが、3戦目から出場停止中だったアンドレイ・アルシャビンが復帰すると、チーム力は急上昇。準々決勝で優勝候補の筆頭と目されていたオランダを撃破した。

 見ものだったのは、延長戦でオランダを3-1で下した試合後の記者会見だった。

 ロシア代表監督はフース・ヒディンク。言わずと知れたオランダ人監督だ。1998年フランスW杯でオランダ代表を、2002年日韓共催W杯で韓国代表を、ベスト4に導いた名将である。つまりヒディンクは母国を敵に回して戦い、番狂わせを起こしたのだ。

 会見場に集まったオランダ人記者の質問に答えるヒディンクはまさに得意の絶頂といった感じで、饒舌だった。

「今日の試合は左サイドバックのジョバンニ・ファン・ブロンクホルストを止めることがカギだと考え、右にウイングのスペシャリストであるイバン・サエンコを張らせたんだ。この勝利はその作戦が的中した結果だ」

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