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久保建英、過密日程の影響は明らか 勝利に貢献も日本代表招集に不安はないのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyukikarhi

 3月15日、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)の久保建英はカディス戦に先発出場し、66分までプレーしている。

 本拠地レアレ・アレーナでのカディス戦で、前半27分には"らしさ"を見せた。どんな状況でも相手を倒す"勝者のメンタリティ"で、右CKから、相手がひと息ついた隙を逃さなかった。速やかにショートコーナーを選択してミケル・オヤルサバルにボールを入れると、これをオヤルサバルはフリックで流し、ミケル・メリーノが蹴り込む先制点を演出した。

 簡単なプレーに見えるかもしれないが、非常に高い集中力の賜物だ。結局、これが決勝点となって、ラ・レアルはカディスを2-0で下した。

カディス戦に先発、後半21分に退いた久保建英(レアル・ソシエダ)photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAカディス戦に先発、後半21分に退いた久保建英(レアル・ソシエダ)photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る 勝負どころでのしたたかさをあらためて示した久保だが、身体は重そうだった。持ち出したボールが引っかかってしまうことが多く、コントロールも長くなってしまいがちで、パス交換もリズムが出ない。いつものイエローカードを誘発する潰され方ではなく、相手の間合いのままで倒されていた。ふだんだったら相手の逆を取って、0コンマ何秒、ミリ単位で差をつけ、優位に立てるのだが......。

「Pillo」

 スペインの大手スポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』は、カディス戦の久保を「ずる賢い人、悪戯っ子、抜け目ない人」という評価しながら、直面した現実も映し出している。

「(前節グラナダ戦はコンディションの問題で出場がなかったが)戦列に復帰した日本人のプレーは、寂しいものだった。ただ、勝利につながるゴールを抜け目なく演出したプレーで、"粉飾"して見せている。悪い試合でもポイントを稼ぎだしているわけだが、本来の電撃的で、最善の判断を見せる"アジア最強のプレー復活"を期待したい」

 そこにはエースへの気遣いと信頼が透けて見える一方で、コンディション面でかなり難しい状況にさらされていることへの理解と不安も滲んでいた。

 単刀直入に言って、今の久保にベストプレーを望むことには無理があるだろう。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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