《独占》引退を発表した岡崎慎司が今の海外組に思うこと「勘違いせず、がんばるべき。周りもちゃんと評価してほしい」 (3ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko

── 若手の海外移籍の場合、4部リーグなどで出場機会が得られることは多いですよね。環境が恵まれているわけではないし、必ずしもトップに昇格できるわけでもありませんが、日本に比べて刺激はあるようです。

「そう。だから過度に海外移籍に期待するんじゃなくて、育てるという感覚が必要だと思います。海外に行く選手に対して、日本人は一番厳しいなと思うんです。海外で出場機会のない人に対してとか、プレミアリーグに行った人に実力が足りていないとか、なんであいつが海外とか、いろいろ批判の声を耳にします」

── たとえば、ドイツ4部とのアマチュア契約や5大リーグ以外だと「行く意味があるのか」という厳しい意見もよく耳にします。

「僕が所属しているシント・トロイデンやベルギーリーグ全体を見ても、Jリーグよりお客さんが入らなかったり、グラウンド環境やトレーニングも日本より悪かったりします。それでも挑戦していること自体、周りもちゃんと評価してほしい。やらないとわからないことが多いと思うので。

 もしかしたらこの先、海外挑戦している若手たちも日本に戻らなくちゃいけなくなるかもしれない。けれど、ヨーロッパの経験があることで、バーンと伸びる可能性もある。もちろん潰れちゃう可能性もありますけど、23歳くらいまでは『育成』という気持ちで見てあげてもいいと思いますよ」

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 ヨーロッパでの指導者──というチャレンジも考えている岡崎慎司の若手に送る視線は温かく、うれしくもなった。ケガを抱えながらもがき、年齢によるプレーの変化も受け止めつつ、トライし続ける環境を選択していきたいと繰り返す言葉に、あらためて彼らしさを感じた。

 シーズン途中での唐突な引退発表も、岡崎らしく思える。今後もあくまで岡崎らしく、泥臭く道を切り開いていくのだろう。

<了>


【profile】
岡崎慎司(おかざき・しんじ)
1986年4月16日生まれ、兵庫県宝塚市出身。2005年に兵庫・滝川第二高から清水エスパルスに加入し、プロ4年目から3年連続ふたケタ得点を記録。2011年1月にシュツットガルトに移籍し、マインツを経て2015年から所属したレスター・シティではクラブ初のプレミアリーグ優勝に貢献する。その後、マラガ→ウエスカ→カルタヘナを経て2022年よりシント・トロイデンに所属。2024年2月26日、今シーズンかぎりでの現役引退を発表した。日本代表歴119試合50得点。ポジション=FW。身長175cm、体重76kg。

プロフィール

  • 了戒美子

    了戒美子 (りょうかい・よしこ)

    1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。

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