鎌田大地の「飛躍の時はもう少し先になる」理由 ラツィオ番記者が指摘する指揮官の流儀

  • フランチェスコ・ピエトレッラ●文 text by Francesco Pietrella(『ラ・ガゼッタ・デロ・スポルト』)
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

 セリエA第8節、ラツィオは本拠地でアタランタに3-2で辛勝している。鎌田大地は後半19分、マテオ・グエンドゥージと交代で出場した。

 4日前のチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第2戦、セルティック対ラツィオ。前半20分をすぎた頃、セルティックの守備陣が空けたスペースに鎌田は体を入れ(彼の得意とするプレーだ)、いつものようにルイス・アルベルトが上げたボールを狙った。そして......何も起こらなかった。彼は誰もいないスペースにボールを送り、絶好のパスを無駄遣いし、ラツィオの値千金のチャンスを潰してしまった。

 この試合は、2009年と2011年にバルセロナで2度欧州チャンピオンになったペドロが、アディショナルタイムにヘディングシュートを決めたおかげで、ラツィオは勝ち点3をもぎ取った。だが、鎌田自身の働きは及第点とは言えなかった。後半には、今夏加入したもうひとりのMF、フランス代表マテオ・グエンドゥージとの連係プレーも見せたが、まだ鎌田に決定的な飛躍の時は訪れていない。

 ただ、鎌田がこのセルティック戦でずっとピッチに立ち続けたことは特筆すべきことだろう。彼が1試合フルにプレーしたのは、ラツィオ移籍以来これが初めてである。その前のリーグ戦4試合では鎌田はすべてベンチスタート。うちミラン戦とアタランタ戦は後半途中からプレーしたが、トリノ戦とモンツァ戦はベンチのまま終わっている。要するに、鎌田はいまだポジションを確立していないのだ。

直近のアタランタ戦は後半19分からの出場だった鎌田大地(ラツィオ)photo by AFLO直近のアタランタ戦は後半19分からの出場だった鎌田大地(ラツィオ)photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る スタンドの上から見れば、鎌田がプレーをよく知っていることは一目瞭然だ。知的で、戦術に忠実で、プレーの質も高い。そのことはマウリツィオ・サッリも気づいているだろう。しかし彼が飛躍するのはまだもう少し先になるかもしれない。

 そう予想するにはいくつかの理由があるが、ひとつの理由は最も単純で、サッリという監督に由来する。どんな選手も、彼との仕事の初期には苦労する。選手はまず彼の頭のなかに入り込み、多少の強迫観念めいた彼独特のやり方を理解し、さまざまなトレーニング方法を吸収しなければならない。

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