バルサは顔ぶれ一新で強化されたが懸念材料も 「ラ・マシア」出身の若手が続々と台頭しているが... (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/AFLO

【ポルトガル代表にラブコールを送るが...】

 売却資金の一部で、シャビはラブコールを送るポルトガル代表サイドバック、ジョアン・カンセロ、同じく相思相愛とも言われるポルトガル代表MFベルナルド・シウバ(いずれもマンチェスター・シティ)の獲得を目論んでいるという。また、すでに契約にサインしたブラジル代表FWヴィトール・ロッキ(アトレチコ・パラナエンセ)に「早めの合流を求める」とも報じられる。一方で放出リストに入っているクレマン・ラングレ、セルジーニョ・デストの行く先も探さなければならず、編成は不透明だ。

 しかし、そもそも外に目を向ける必要はあるのか?

 逆転勝利したトッテナム戦は象徴的だった。試合にスリルを生み出したのは、交代で入ったラ・マシア組の若手たちである。

 チームを牽引したのは、ラミン・ジャマル(16歳)だった。独特のボールの置き方、運び方、その左足は「メッシ後」の時代を切り開く予感をさせる。実際、同点弾のアシストや逆転弾の崩しは見事だった。

 逆転弾を決めたアンス・ファティ(20歳)は、いよいよ開眼間近か。シュート技術の高さはもともとラ・リーガ屈指。トッテナム戦の動き出しとシュート軌道はすばらしく、フィットしつつある。

 プレシーズン、最も序列を上げたのはフェルミン・ロペス(20歳)だろう。スーパーサブとしては今や手放せない存在。ラ・マシアの申し子的なオートマチズムを備えている。

 そしてアブデ・エザルズリ(21歳)は、トッテナム戦でも脅威になっていた。その処遇は「同じラ・マシア出身ニコ・ゴンサレス(ポルトへ850万ユーロの移籍金で、パスは60%を維持)と似た条件でベティスと交渉」とも噂されるが、本気で彼を放出するつもりなのだろうか。

 かつてバルサがフランク・ライカールト監督時代に復権を果たしたとき、ロナウジーニョのような破格のスターがいたことで、リオネル・メッシらが才能を触発され、一気に台頭した。同じような現象が起こっているのかもしれない。レバンドフスキやペドリのような別格プレーヤーのおかげで、ファティ、ジャマルが才能を爆発させたとしたら......バルサのプレースタイルは継承され、新時代が到来する。

「ラ・マシアこそ、バルサだ」

 バルサ中興の祖である故ヨハン・クライフの戒めが、啓示的に聞こえる。シャビ・バルサの開幕戦は8月13日、敵地でのヘタフェ戦となる。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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