三笘薫が克服すべき課題が見えたマンU戦 一流ウイングの証である「縦抜け」をやめたのはなぜか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by REUTERS/AFLO

【三笘の誘いに乗ってこない相手SB】

 縦に抜けるか、抜かれるか、これはウイング、SBそれぞれにとって大きな問題だ。斬るか斬られるかの関係と言ってもいい。白黒がつく瞬間なのだ。縦に"勝負する"という表現が使われる理由でもある。

 左ウイングに右利きを、右ウイングに左利きを置く傾向が、ここ十数年ぐらいの間に急速に強まった。右利きの右ウイング、左利きの左ウイングは数をグッと減らしている。一番の理由は切れ込んでシュートが狙いやすいからだ。三笘もこのマンチェスター・ユナイテッド戦で切り返しから、その手のプレーを試みている。後半13分には、後方から走り込んだダニー・ウェルベックへ身体を開き右足でラストパスを送っている。右利きの左ウイングらしいプレーで惜しいシーンを作り出している。

 だが、相手のCBにとって本当に嫌なプレーは最深部からのマイナスの折り返しだ。その角度が鋭ければ鋭いほど、えぐればえぐるほど、チャンスの度合いは高まる。内ではなく縦にどれほど抜けて出ていけるか。鋭い折り返しを決められるか。ウイングとしての一流度、怖さを推し量るバロメータになる。

 そうした意味でこの日の三笘のプレーはいささか寂しかった。先述の前半24分のプレーが縦抜けにチャレンジした最後になる。三笘よりワンビサカのほうが一枚上手だった。鈍感なのか、鋭いのか、三笘の誘いに乗ってこないのだ。ここまで逆が取れず、弱気を露呈させる三笘を見るのは珍しい。

 単なる相性の問題だとすれば、ワンビサカは2人といないわけで、ただの苦手として処理できるが、問題が三笘側にあるとすれば厄介だ。技術的問題なのか、精神的問題なのか。いずれにしても克服しなければならない課題になる。

 後半アディショナルタイムの93分、エストゥピニャンがドリブルでインナーラップし、三笘が開いて構えるというシーンがあった。先述した前半24分のシーンがそうであったように、エストゥピニャンが三笘にパスを配球するのが定石だ。しかしエクアドル代表の左SBは三笘の存在に見て見ぬ振りをするように、ミドルシュートを放った。

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