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久保建英の挑戦はネクストステージに。ソシエダのリーダーの先に「ワールドクラス」の扉が待つ

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 第20節バジャドリードとの一戦で、久保建英(21歳、レアル・ソシエダ)はリーガ・エスパニョーラ後半戦の一歩を踏み出している。

 0-1で敗れたにもかかわらず、久保は公式のゲームMVPに選ばれた。各紙も、軒並みチーム最高評価を与えている。一番多く決定機を作り出し、ライン間に入って小気味よくパス交換し、鋭いシュートを打つ姿は頼もしかった。主力に故障者が多く出るなか、同世代の若い選手を率いていたと言えるだろう。

 久保は、スペイン挑戦4年目になる。今季は3得点3アシストという数字以上に、リーガ3位のチームで主力となり、スペクタクルな試合を繰り広げている。あくまで折り返し時点だが、「過去ベストシーズン」だ。

 三笘薫(ブライトン)や鎌田大地(フランクフルト)もそうだが、久保は「ワールドクラス」の扉を開けようとしている。さらにその先には、リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドに匹敵する領域がある。

 そんな重い扉の最後の鍵とは?

前節バジャドリード戦では敗れたにもかかわらずMVPに選ばれた久保建英(レアル・ソシエダ)前節バジャドリード戦では敗れたにもかかわらずMVPに選ばれた久保建英(レアル・ソシエダ)この記事に関連する写真を見る 今シーズン、久保は新たにレアル・ソシエダ(ラ・レアル)に入団したが、下馬評は高くなかった。ビジャレアル、ヘタフェでは戦術的にフィットせず、マジョルカでもハビエル・アギーレ監督に「気持ちが入っていない」と言われ、すれ違いを起こしていた。「ヨーロッパリーグにも出場するリーガ上位のラ・レアルで戦力になるのか」という懐疑的意見も強かった。

 しかし、久保はそれを黒から白にひっくり返した。

「久保はずっと私のことを知っていたのか、誰かが彼に山ほどチーム資料を送っていたのか。まるで3年間、ずっと一緒に戦ってきた選手のようにプレーしていた」

 レアル・ソシエダのイマノル・アルグアシル監督は、開幕のカディス戦後にそう語っていた。

 久保は開幕戦から、水を得た魚のようだった。ボールを受け、弾き、運び、再び受ける。その繰り返しの精度やタイミングに、彼の才能が詰まっているのだが、ラ・レアルは理想的なチームだったと言えるだろう。コンビネーションがプレーの基本にあって、高い次元でのタイミングや距離が求められるわけだが、その点で久保は突出して優れていた。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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