カタールW杯総括。名波浩が選んだ「ポジション別ベストプレーヤー」 (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・構成 text by Shino Yukihiko
  • photo by JMPA

 フランスのアントワーヌ・グリーズマンが今大会で改めて評価されたのも、キーパスが出せたから。メッシやグリーズマンが、相手にとって一番危険なエリアでボールを受けて、決定的なパスを出す。彼らのような選手を自由に晒していたら露骨にやられる、というのが証明された大会でもあったと思う。

 最後にポジション別のベストプレーヤーを挙げるとGKはモロッコのヤシン・ブヌ。モロッコは準々決勝まで失点数が1点と、とにかく守備が固くて、その中心を担っていたのがブヌ。セービングの能力はもちろん、相手との駆け引きも抜群だったし、PK戦も際立っていた。

 DFはクロアチアのヨシュコ・グヴァルディオル。体も強いし、読みも速いし、足元も下手じゃない。近い将来、世界最高峰のDFになってくる逸材だと思う。元イタリア代表のアレッサンドロ・ネスタを彷彿とさせるものがあった。

 MFは守備的なところで、モロッコのソフィアン・アムラバト。スプリント能力と前に運ぶ推進力、守備強度の高さは抜群。間違いなくモロッコ躍進の立役者だったし、今大会最大のサプライズだった。

 攻撃的なところは、グリーズマン。先ほども言ったようにキーパスが非常に多いし、ボールを持った時にミスが少ない。周りを生かすためのタメを作れるし、自分がおとりにもなれるし、シャドーとしての役割に長けている。守備でのカバーもサボらず、献身性は見事だった。

 FWは言うまでもなく、メッシとエムバペ。エムバペはW杯歴代最多得点記録(ドイツのミロスラフ・クローゼの16点)まであと4点。年齢的に少なくともあと2大会は出るだろうから、更新するのは確実だろう。本当にすごいと思う。

 決勝カード以外で、最も印象に残っているチームを挙げれば、モロッコ。ハキム・ツィエクとアクラフ・ハキミの右サイドと中盤のアゼディン・ウナヒは強力だったし、FWのユセフ・エン・ネシリの高さは突出していた。あの高さに相手が引っ張られることで、周りが生かされていた。

 それから、アタッカー陣はパワーがあって、日本とはちょっと質の違いを感じた。アフリカ勢初のベスト4という結果は賞賛に値するし、今大会を象徴する非常に魅力的なチームだった。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る