オランダを救ったカタールW杯最高のウイングバックは、1対2でもサイドを制す (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

アメリカを圧倒した多彩なパスワーク

「プリシッチ+ロビンソン」対ダンフリース。アメリカはこのサイドの攻防で劣勢を強いられたことが敗因だった。ダンフリースは前半終了間際にも、マイナスの折り返しを決め、アシスト役を演じた。得点パターンは1点目とほぼ同じ。決めたのは左WBのブリントで、身体を開きながら、左足できれいに流し込んだ。

 戦前、筆者はアメリカにチャンスありと予想した。オランダの3バックは間延びしやすいと見たからだ。3-4-1-2の前の3人が、相手ボールに転じた際、プレスに参加できない「死んだ人」になることが多く、1回攻めると相手が格下でも反撃を浴びる構造になっていた。最終ラインとトップとの間がスカスカになり、相手にスペースを与えることが多かった。この試合でも、そうした傾向は見られた。

 だが、その前にオランダの持つもうひとつの特徴が発揮されたことも事実だった。パスワークの質は、パスが出し手と受け手の2者間の関係で終わるチームより、3者的な広がり、4者的な広がりを持つチームのほうが高いとされる。攻撃のレベルの高さを示す物差しといってもいいが、今大会のオランダはその点が断然、優れている。どこよりもクリエイティブなパスワークを展開する。

 それでいながら、ボールを奪われると、危ないサッカーに急変するわけだが、この試合でアメリカは、高い位置でオランダのボールを奪うことができなかった。オランダを慌てさせる機会が、戦前の想像よりはるかに少なかった。オランダの多彩なパスワークに圧倒された。予想以上に相手のパスワークが上等で、面食らったという感じだった。

 とはいってもアメリカは大国だ。サッカーにおいても、これまで数々のアメリカンスピリットを発揮してきた。最後まで諦めない精神である。後半31分、チャンスメークをしたのはプリシッチで、その右からの折り返しを、交代出場のハジ・ライトがうまく引っかけ、1点差とした。

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