躍進アジア勢のトリを務めた韓国だが、こんなサッカーをしていて大丈夫なのだろうか (2ページ目)
劇的な結末で最高の結果を手にした韓国。とはいえ、グループリーグ3試合を通じての試合内容はというと、あまりパッとしないものだった。
ピッチ上の選手たちが有効な立ち位置をとることができず、ボールの動きにスムーズな流れとスピード感が生まれない。バランスを崩して穴を開けてしまうことを恐れているのか、繰り広げられるサッカーがとにかく硬直してしまっているのだ。
ボールがまったく動かず、パスが少ないというわけではない。だが、その中身はというと、横パスを何本かつないでサイドに展開したら、あとは縦勝負。そんな単調な攻撃が繰り返されるばかりだった。
選手同士で作るトライアングルをローテーションさせながら、相手のマークを外して敵陣深くに進入する。そんなシーンは皆無と言っていいだろう。
昨季のプレミアリーグ得点王、FWソン・フンミンという際立つ武器も、効果的に生かされているようには見えなかった。
今夏のE-1選手権で日本と対戦した際、韓国は横浜F・マリノス勢が奏でる美しいコンビネーションに翻弄されていたが、この硬直したサッカーでは必然の結果だっただろう。それは、ワールドカップという舞台でも、さして変わることはなかった。
日韓のサッカーを比較すれば、両国の間には以前から選手の特長に明らかな違いがあった。
小柄で俊敏性に長け、テクニックに優れた中盤の選手が多く出てくる日本に対し、体が大きく、屈強なストライカーやセンターバックに優れた選手が出てくる韓国。そうしたタイプの違いが、チームとして志向するサッカーの違いとなって表れているとも言えるが、それにしても、こんなサッカーをしていて大丈夫なのだろうかと、他人事ながら心配になるほどだ。
日本が世界レベルで戦える力をつけるためには、アジア全体のレベルアップが必須。ワールドカップ予選やアジアカップなどが、高いレベルでしのぎを削る舞台になってこそ、日本の強化にもつながっていく。
にもかかわらず、アジアサッカーの中心的役割を担うはずの韓国が、こんなにも退屈なサッカーをしていることは、日本にとっても、他のアジア諸国にとっても、歓迎すべき状況とは思えない。
ファン・ヒチャンやソン・フンミンら、うらやむばかりのタレントをもってすれば、もっとダイナミックで見応えのあるサッカーができるはずである。
【著者プロフィール】浅田真樹(あさだ・まさき)
フリーライター。1967生まれ、新潟県出身。サッカーのW杯取材は1994年アメリカ大会以来、2022年カタール大会で8回目。夏季五輪取材は1996年アトランタ大会以来、2020年東京大会で7回目。その他、育成年代の大会でも、U-20W杯は9大会、U-17W杯は8大会を取材している。現在、webスポルティーバをはじめとするウェブサイトの他、スポーツ総合誌、サッカー専門誌などに寄稿している。
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