デ・ブライネとカタールW杯で思い出す4年前の14秒カウンター。ボールを持つ彼になぜ追いつけないのか風間八宏が解説

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

風間八宏のサッカー深堀りSTYLE

第20回:ケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ/ベルギー)

独自の技術論で、サッカー界に大きな影響を与えている風間八宏氏が、国内外のトップクラスの選手のテクニック、戦術を深く解説。今回はマンチェスター・シティやベルギー代表で、世界トップクラスのプレーを見せ続けている、ケビン・デ・ブライネを深掘り。彼がボールを持った時にチームが急にギアチェンジして「速く」なる、あのカラクリを明かす。

◆ ◆ ◆

動きながらのプレーが抜群

 最新のFIFAランキングで2位に位置するベルギーは、今回のカタールW杯でも優勝候補に数えられる。そのチームの顔とも言える存在が、攻撃的MFとしてチーム全体をコントロールするケビン・デ・ブライネだ。

デ・ブライネの正確で速いプレーは、カタールW杯の注目になるデ・ブライネの正確で速いプレーは、カタールW杯の注目になるこの記事に関連する写真を見る 日本のサッカーファンの脳裏に刻まれている、4年前の"ロストフの悲劇"。日本のコーナーキックからわずか14秒で、ナセル・シャドリの決勝ゴールが生まれた語り草の試合である。

 あの場面で、GKティボ・クルトワからボールを受け、日本陣内まで一気にドリブルでボールを運んだのが、デ・ブライネだった。

 あれから4年が経過し、3大会連続でW杯の舞台に立つ予定のデ・ブライネだが、その輝きは増すばかり。むしろ、すごみを増していると見るべきだろう。

 果たして、世界屈指のワールドクラスとして高く評価される、デ・ブライネの最大の特長はどこにあるのか。風間八宏氏が、解説してくれた。

「彼がなぜ特別な選手なのかと言うと、動きながらのプレーが抜群に優れているからです。

 たとえば、動きながら正確にボールを扱い、コントロールできる。しかも、動きながら正確なパスを出せて、高精度のシュートでゴールを決めることもできます。さらに言えば、スピードに乗ってドリブルしているなかでも、周りがよく見えています。

 それと、ボールが体から離れず、左右両足で正確にボールを蹴ることもできるので、一度前を向いてボールを運び始めたら、どこにパスをするのか、いつシュートをするのか、相手はまったく予測がつきません。走るスピードはそれほど速いわけではないのに、ボールを持ったら速くなるのは、そういったプレーの正確性、技術の高さがあるからです。

 4年前の日本対ベルギーのカウンターのシーンを見ても、デ・ブライネの特長がよく表れています。あの時も、ベストなコース取りで、最速のドリブルをするデ・ブライネに、誰も追いつくことができませんでした。あのプレーだけを見ても、彼が特別な選手であるのがよくわかります。

 表現は難しいのですが、ゲームメイカーのようでゲームメイカーでもなく、チャンスメイカーに見えてチャンスメイカーでもなく、ストライカーのようなプレーもしますが、決してストライカーではない。

 要するに、すべてを持っているのが、デ・ブライネという選手だと思います」

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