ドイツのミュラーはなぜ神出鬼没なのか? 風間八宏は「ボールを持たずに試合をコントロールできる」と分析 (2ページ目)
試合で役立ち、試合を決められる
神出鬼没とは、まさにミュラーの動きを表現するに相応しい。しかしその動きのひとつひとつには、ミュラーにしかわからない規則性があるのかもしれない。
風間氏が、ミュラーの特長についての説明を続ける。
「確かにミュラーも高い技術の持ち主だと思いますが、たとえばバイエルンの選手のなかで特別にうまい選手というわけではありません。もしかしたら、技術的には上から数えたら先発11人に入れないかもしれない。
でも、ミュラーほど試合で役立つ選手、試合を決められる選手はいません。しかも、ハードワークを惜しまず、この年齢になってもよく動くし、よく走る。キックの種類は少なくても、シュートはうまいし、ラストパスの質も高い。結局、どんなにボールテクニックやスピードがあっても、試合を決められなければ意味がないと考えれば、チームにとってはミュラーのほうが重要な存在になります。
ミュラーを見ていると、少しクラシックなドイツ人らしい選手との印象を強く受けます。最近はドイツも変わってきたので、こういうタイプの選手は減りましたが、以前は勝負を最優先に考える国だけに、うまい選手より、いかに試合を決められるかという点を優先して選手を育てていたからです。
だから、ドイツには不器用でもゴールを決める能力の高い選手が多く、逆にゴールを決めさせない能力の高いDFを、多く輩出してきた歴史があります。
ただ、ミュラーの場合は、トップレベルでも通用するだけの技術を持ちながら、そのうえで、伝統的にドイツが大事にしてきた勝敗を決める部分の能力も兼ね備えている。そのための眼と頭脳と肉体を持っている。サッカーの進化にもすぐに順応して、長くチームの中心として最先端で活躍し続けている点を考えると、ミュラーも天才と言っていいのではないでしょうか」
風間氏も舌を巻く、稀有なタイプの天才ミュラー。カタールW杯の初戦で対戦する日本にとっては、警戒しなければいけない選手のひとりであることは間違いないが、その効果的な対策はあるのだろうか。
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