中井卓大が18歳でたどり着いたレアルへの登竜門。カスティージャの戦いとは何か (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

指揮官ラウルの期待

 これぞレアル・マドリード伝統の「王者の資質」だ。

 そして延長前半5分だった。味方が自陣からドリブルで持ち上がると、左サイドから抜け出そうとして、エリア内でボールがこぼれた。中井は目の前に転がってきた瞬間を逃さず、躊躇なく右足でボールを叩き、ゴールの上に向けて突き刺した。これが決勝点になった。

「重要な試合で勝負を決める活躍」

 そこを重んじるレアル・マドリード関係者にとって、そのインパクトは大きかった。14回目となるスペインユース国王杯優勝で、チームはカップを掲げ、歓喜に沸いた。ひとつのタイトルを自分の力で手にすることができたら、その次の道が開けるのだ。

「中井のテクニックレベルの高さは、育成年代でずっと注目されてきた。17歳にしてカスティージャで親善試合に出場し、公式戦の招集メンバーにも3試合選ばれている。すでにトップチームの練習にも呼ばれた経験があって、今回のカスティージャ昇格となった」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』の評価も高い。

「カスティージャの監督であるラウルは、中井の理解者と言える。ユースを率いていた時代もポテンシャルを確信し、引き上げている。2020年のユースリーグ決勝大会には、当時カテゴリーで2歳下の選手だった中井を、思いきって招集した。特に攻撃センスの高さに期待し、目をかけている」

 今回のカスティージャ昇格は、「試験的で、成長を停滞させないための抜擢」とも言える。年代的にはまだユースでプレーするのが通常だ。20~21歳の選手が中心のカスティージャで、焦りは禁物だ。

 しかし、年少選手だからといって、気は抜けない。

 たとえば、昨シーズンまでのエースFWファンミ・ラタサがヘタフェへ移籍した代わりに、レバークーゼンのスペイン人、17歳のFWイケル・ブラーボも獲得が内定。ブラーボはバルサの下部組織ラ・マシア育ちだが、ドイツに渡ってブンデスリーガ史上3番目に若い16歳298日でデビューし、そのポテンシャルは次世代のスペインを担うと言われる。

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