リバプールのストーミングとレアル・マドリードのマドリディスモ。激闘の準決勝を制したCLファイナリストの戦術 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 ロングパスがトリガーとなって、たとえ相手ボールになってもハイプレスでそのまま押し込んでしまうところがリバプールらしさである。MF陣のセカンドボール回収力が高く、敵陣でボールを奪うと間髪入れず再び攻め込む。FWのプレスバックも速い。この速い攻め込みからのハイプレス、波状攻撃というリズムで対戦相手を解体してしまう。

 相手はロングパスをカットしても、すぐにボールを奪われてしまう。攻めようとする時は守備とは反対に相手から離れるので、そこでボールを奪われると自然と守備は脆くなってしまう。リバプールは固めた守備ブロックをこじ開ける手間が省けるわけだ。

 ただし、最初から相手に引かれてしまった時にどうするかは、当初の課題だった。チアゴの加入はそのためだったと思う。それまでのリバプールにはいないタイプの超絶テクニシャンであるチアゴは、攻撃の緩急を操れるプレーメーカーで、守備ブロックをこじ開ける司令塔となっている。

 左のチアゴから、逆サイドへの誘導ミサイルのようなロングパスをボレーで折り返す豪快な攻め手も加わった。右からはアレクサンダー=アーノルドが同様の横断パスを供給している。

引いた相手の頭上をボールが通過した直後に、DFが周囲をスキャンする暇も与えずにクロスボールが入ってくるので、ゴール前でマークするのは非常に難しい。力感に溢れたリバプールらしいアプローチだ。

 切り札はサラーとマネのコンビネーション。長年のコンビは互いの長所と能力を知り尽くしているようで、あうんの呼吸で連係する。互いの技術と身体能力をわかっていて、そのぎりぎりのところで勝負を仕掛ける。守備側としては予想外の速さや足の伸び方、キックの精度なのでついていけない。

 左ウイング、ルイス・ディアスの活躍も決勝進出に貢献した。ドリブルでの進入はディオゴ・ジョタとは違った強みがあり、マネとサラーのコンビに試合の性質に合わせてジョタ、ルイス・ディアスを使い分けられるようになっている。

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