三笘薫が久保建英、長友佑都を超えるような活躍。フロンターレ時代より数段たくましくなった

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Panoramic/AFLO

 ベルギーの首都ブリュッセルのサンジル地区をホームタウンにするユニオン・サン・ジロワーズ。本拠地のスタッド・ジョセフ・マリアンは、TGVやユーロスターが停車するブッリュッセルの主要駅、南駅からは徒歩圏内と便利な場所に位置するものの、収容人員は1万人足らず。のどかな旧式のスタジアムだ。

 クラブ創立は1897年。創立123年を誇る伝統的なクラブだが、昨季まで48シーズン、ベルギーリーグの2部以下のカテゴリーに所属していた、いわば忘れられていた名門チームだ。ところが、今季1部リーグに復帰すると、快進撃を続け、12月20日現在、2位のクラブ・ブルージュに勝ち点6差をつけ首位に立っている。

 三笘薫がこのチームに合流したのは、10月16日の第11節セラン戦からだが、以降の戦績は9勝1敗。来年の話をすると鬼が笑うと言われるが、リーグ優勝はもちろん、来季のチャンピオンズリーグ(CL)出場の期待感も高まってきている。

 セルクル・ブルージュと対戦した第20節、12月18日の一戦でも、サン・ジロワーズは0-2の劣勢から鮮やかな逆転劇を飾った。その1番の立役者は誰か。日本人のよしみで言うわけではないが、ズバリ三笘だと断言したくなる。

セルクル・ブルージュ戦で5得点目のゴールを決めた三笘薫(ユニオン・サン・ジロワーズ)セルクル・ブルージュ戦で5得点目のゴールを決めた三笘薫(ユニオン・サン・ジロワーズ)この記事に関連する写真を見る チームの中心は3-5-2で2トップを張る、現在、得点ランクで首位を行くドイツ人のデニス・ウンダヴと、最近ベルギー代表に招集されたダンテ・ヴァンザイルだ。この2人が相手DFラインの裏をかき回す、縦に速いカウンターがサン・ジロワーズの特徴になる。俗に言う堅守速攻型。川崎フロンターレとは真逆のサッカーといっても過言ではない。

 三笘がプレーするのはその左ウイングバックだ。川崎でプレーした4-3-3の左ウイングと比べ、10~20メートルほど平均ポジションは低い。守備的MFと同じくらいの高さになる。相手ボールになれば当然、最終ラインまで後退。5バックの一員に加わる。

 ウイングとウイングバック。どちらのほうが三笘に適しているかは言わずもがなだ。同チームのフェリス・マッズ監督に思わず進言したくなるが、驚くことに、三笘はウイングバックとして、3-5-2のサッカーに適合したプレーを見せている。もう少し高い位置でプレーしたいという欲求を抑え、ポジションに忠実で真面目な動きを見せている。

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