レアル、CLでPSGと激突。アンチェロッティの超効率主義サッカーは通用するか
レアル・マドリードを率いるイタリア人カルロ・アンチェロッティは、「隙がない」指揮官と言えるだろう。スペクタクルなサッカーを信奉するわけでも、「劇場型」と言われる周囲を巻き込む言動を用いるわけでもない。ひたすら泰然自若として挑み、自明の理であるかのように勝利をつかみ取る。
今シーズン、新たに監督に就任したアンチェロッティは、レアル・マドリードをリーガ・エスパニョーラ首位(2位セビージャとの勝ち点差は8)、チャンピオンズリーグ(CL)でもベスト16へ導いている。アトレティコ・マドリードとの直近のダービーマッチは、2-0と完勝だった。昨シーズンはジネディーヌ・ジダン監督が再建に失敗し、無冠に終わっただけに、明らかな変化だ。
アンチェロッティはとにかく波風を立てない。エデン・アザールやガレス・ベイルのようなスター選手をベンチに置いていられるのは、カリスマ性のある証拠だろう。うるさいメディアとのつき合い方も絶妙だ。
そして徹底した効率主義で、結果を叩き出している。「つまらない」とも感じる堅守カウンター戦術なのだが、それだけでは括れないしたたかさが見える。アトレティコ戦の先制点は象徴的だった。
敵のプレスにつなぐことをあきらめ、GKティボー・クルトワがセーフティに長いボールを蹴る。相手に回収されたあと、ヴィニシウス・ジュニオールが中盤で猛然とプレスをかけ、これは惜しくも敵ボールとなるが、ルカ・モドリッチが鋭い読みでインターセプト。拾ったボールをカゼミーロが迅速に前へつなげ、カウンターからカリム・ベンゼマが鮮やかなボレーで叩き込んだ。
2013~15年以来、レアル・マドリードを指揮するのは2度目となるカルロ・アンチェロッティこの記事に関連する写真を見る<リスクを避け、敵のリスクを見つけ、リターンを多くする>
単純明快な采配は名人芸だ。しかし、その完全無欠さにこそ弱点はあるかもしれない。
マドリードダービー後、ひとりの記者が訊いた。
――この躍進は、やはり「アンチェロッティ効果」でしょうか?
「いやいや」
イタリア人監督は笑顔で答え、その信条を端的に語った。
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