今季強さが際立つリバプール。自分たちの正義「ストーミング」で小賢しいポジショナルプレーなどひと呑み (4ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

【インテンシティは正義】

 リバプールの「攻撃」は、言ってしまえば「数撃てば当たる」方式だ。

 90分間にできるだけ多く敵陣にボールを入れる。そこではボールがどちらにあるかに関係なく、得点のためのアタックが行なわれる。フィニッシュの形は問わない。なるべく早く、なるべく多くチャンスを作り、そのうちいくつかが当たればいい。ただ、リバプールは当たりを引く確率が異常に高い。

 今回のCLで、リバプールのグループは、いわゆる「死の組」のはずだった。アトレティコ・マドリード、ポルト、ミランと難敵ぞろい。息を抜ける試合はひとつもない、はずだった。しかし結果は6戦全勝。他のグループのバイエルン、アヤックスとともに全勝でグループステージを勝ち抜けたが、対戦相手を考えればリバプールの強さが際立つ。

 全勝の3チームが、いずれも高強度のプレーぶりだったのは偶然ではないだろう。現代サッカーにおいて強度は正義で、生半可に小賢しいポジショナルプレーなどひと呑みにしてしまう。

 ポジショナルプレーの元祖とも言われるヨハン・クライフは、「1人が15メートルの幅でプレーするのが理想的」と言っていた。これはそのほうが試合に勝てるというほかにもうひとつの理由があって、それはより多くの選手がボールをプレーする機会があるスタイルだということ。子どもからプロまで、選手はボールをプレーするのが「楽しい」はずなので、そういうサッカーをすべきだという強い動機がある。

 クライフ推奨のサッカーが最高潮に達したジョゼップ・グアルディオラ監督時代のバルセロナは、ボールポゼッションが70%を軽く超えてしまう試合も多く、その時はほとんど1チームしかボールをプレーしていない状態だった。淡々とパスを回し、パターン練習のように着々とゴールを重ねる。その頃、クロップはバルサの静的なサッカーを「退屈」だと言っていた。

 クロップにとってサッカーはもっと激しく、活気に溢れているべきなのだ。遠くから狙撃するのではなく、むしろ素手で殴り合いたい。もちろんリバプールもポゼッションはするし、試合の鎮静化もやるが、シティやバルサとは動機が違いすぎる。だから、行く先も同じではないとしか思えないのだ。

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